個人事業主が確定申告を税理士に依頼する際の費用相場は?メリットもあわせて解説

個人事業主にとって確定申告は手間も時間もかかる作業ですが、税理士に依頼すればミスや漏れを防ぎ、安心して本業に専念できます。ただし、依頼には当然費用が発生するため、事前に相場やメリットを把握しておくことが大切です。本記事では、税理士に確定申告を依頼する際の費用相場や依頼するメリット、注意点についてわかりやすく解説します。税理士への外注を検討している方はぜひご覧ください。
個人事業主が確定申告を税理士に依頼するケースとは

個人事業主として事業を営む中で、「確定申告は自分でできるのか?」「税理士に依頼すべきか?」と迷う方は少なくありません。確定申告は毎年必ず発生する業務ですが、売上や経費、控除の種類が多くなると計算が複雑になり、申告ミスが発生するリスクも高まります。
そのような場面で力を発揮するのが税理士の存在です。税理士に確定申告を依頼することで、業務の正確性や効率性が向上するだけでなく、節税につながるアドバイスを受けられる場合もあります。
ここでは、どのような個人事業主が確定申告を税理士に依頼すべきなのか、主なケースを詳しく解説していきます。
確定申告が必要な個人事業主の例
まず前提として、以下のような条件に該当する個人事業主は、毎年「所得税の確定申告」が必要です。
- 年間の所得が48万円を超える場合
- 青色申告を選択している場合(65万円・55万円控除などを適用する場合)
- 消費税の課税事業者に該当する場合
- 不動産所得、雑所得、一時所得などがある場合
たとえば、Webデザイナーやライター、ハンドメイド作家、整体師などフリーランスで活動している方、あるいは副業として一定の売上がある方も「個人事業主」として扱われ、原則として確定申告が必要です。
また、開業届を提出していなくても、実質的に事業を営んでいれば、税務上は個人事業主とみなされるケースもあります。
このような方々にとって、確定申告は避けて通れない手続きですが、申告内容が複雑な場合や帳簿作成に不安がある場合には、税理士への依頼が現実的な選択肢となります。
参考:確定申告を税理士に依頼する費用相場はいくら?依頼のメリットを解説
自力での申告が難しい場合の判断基準

個人事業主が税理士に確定申告を依頼すべきかどうかを判断するには、以下のようなポイントを基準に考えるとよいでしょう。
1. 売上や取引件数が増えている
売上が増えるにつれて、帳簿の記録や仕訳作業が煩雑になります。特に年間売上が1,000万円を超える個人事業主は、消費税の課税事業者になる可能性があり、税金の計算や申告手続きがさらに複雑になります。このようなケースでは、税理士に任せることで本業に集中できるメリットがあります。
2. 経費処理が多岐にわたる
事業に必要な経費を正しく計上することは、節税に直結します。しかし、「どこまで経費として認められるのか?」という判断が難しい場合もあります。たとえば、自宅兼事務所の家賃や光熱費、接待交際費、旅費交通費などは判断が分かれやすい項目です。こうしたグレーゾーンの処理に自信がない場合は、税理士のアドバイスを受けることで、正確な申告が可能になります。
3. 青色申告を選択している
青色申告は最大65万円の特別控除を受けられるなど多くのメリットがありますが、複式簿記での記帳や決算書の作成など、一定の専門知識が求められます。会計ソフトを使っても不安が残る場合は、税理士に依頼することで安心して控除を活用できます。
4. 節税対策をしっかり行いたい
税理士は最新の税制に精通しており、個人事業主の状況に応じた節税策を提案してくれます。たとえば、「小規模企業共済」「iDeCo」「減価償却」など、節税に関するアドバイスを受けることで、納税額を大きく抑えられる可能性があります。
5. 確定申告の作業時間を減らしたい
事業が忙しい個人事業主にとって、確定申告の準備は大きな負担です。領収書の整理や帳簿付け、控除の確認、申告書の作成まで、自力で行うには相当な時間と労力が必要です。税理士に依頼すれば、こうした業務を効率化でき、クオリティも担保できます。
6. 税務調査への不安がある
万が一、税務署から調査の連絡が入った場合、税理士が対応してくれることで精神的な安心感が得られます。日頃から税理士と連携していれば、申告内容の正確性も高く、調査対象になりにくいというメリットもあります。
参考:税理士に確定申告を依頼したときの費用は?サラリーマン・個人事業主の場合も解説
税理士に依頼した場合の確定申告の費用相場

個人事業主が税理士に確定申告を依頼する場合、気になるのが「いくらかかるのか?」という費用面です。税理士への依頼費用は一律ではなく、申告内容や契約形態、業種や売上規模、業務の範囲などによって大きく異なります。ここでは、代表的なケースごとの費用相場を解説します。
白色申告の場合の費用相場
白色申告は青色申告に比べて記帳要件が緩く、必要書類も比較的シンプルです。そのため、税理士に依頼する場合の費用も抑えられる傾向があります。
一般的には、5万円〜10万円程度が白色申告の確定申告代行費用の相場です。ただし、帳簿の整理や領収書の確認が必要な場合は、別途記帳代行費用が加算されることがあります。
例えば、売上や経費の整理が済んでおり、確定申告書の作成と提出のみを依頼する場合は5万円前後で済むこともあります。一方で、領収書の分類からサポートしてもらう場合は10万円程度になることもあるため、事前に見積もりを取ることが重要です。
青色申告(65万円控除)の場合の費用相場
青色申告特別控除(65万円)を受けるには、複式簿記による帳簿作成と貸借対照表・損益計算書の提出が必要です。このように手間のかかる書類作成が求められるため、白色申告に比べて費用は高めです。
税理士に依頼する場合、10万円〜20万円程度が相場です。会計ソフトで記帳が完了しており、申告書の作成とチェックのみを依頼する場合は10万円前後に収まることもあります。しかし、記帳からすべて丸投げする場合は、20万円を超えるケースもあります。
青色申告は節税メリットが大きいため、費用がかかっても税理士に依頼する価値は十分あります。
顧問契約とスポット契約の違いと費用感
税理士への依頼方法には、「顧問契約」と「スポット契約(単発依頼)」の2種類があります。
- スポット契約:確定申告の時期だけ税理士に依頼する形式で、費用相場は5万〜20万円ほどです。業務内容に応じて柔軟に依頼できる一方で、毎年税理士を探す手間が発生する可能性があります。
- 顧問契約:毎月の経理・税務を継続的にサポートしてもらう契約で、月額1万円〜4万円程度が相場です。決算・確定申告の時期には別途申告報酬(10万〜30万円程度)が発生する場合もあります。
年間を通じてサポートを受けたい、資金繰りや節税の相談を定期的にしたいと考えている個人事業主には、顧問契約がおすすめです。
記帳代行を含む場合の追加費用
帳簿作成が自分でできない場合や、レシートの整理なども含めて税理士に依頼したい場合は、「記帳代行」もセットで依頼する必要があります。
この記帳代行の費用は、年間で3万〜10万円程度が目安です。取引件数や仕訳数が多い場合は、さらに高額になることがあります。
記帳代行を含めたパッケージで依頼することで、確定申告作業をすべて任せられる一方、費用が上がる点には注意が必要です。記帳ソフトに入力したデータをそのまま税理士に共有すれば、記帳代行費用を抑えることも可能です。
業種・売上規模・作業量による費用の目安
税理士報酬は、個人事業主の業種・売上規模・作業量によっても異なります。
- 売上が500万円未満:比較的簡単な申告で済むため、費用は5万円〜10万円程度に収まる傾向があります。
- 売上が1,000万円以上:消費税申告も必要になる場合があり、費用は10万円〜20万円以上になることが一般的です。
- 売上が3,000万円以上:業務内容が多岐にわたることが多く、20万円〜30万円以上かかるケースもあります。
また、不動産所得や暗号資産(仮想通貨)取引などがある場合は、通常の事業所得に比べて申告が複雑になるため、別途費用が加算されることもあります。
税理士費用を左右する要素
税理士に確定申告を依頼する際の費用は、個人事業主の状況や依頼内容によって大きく変動します。ここでは、税理士費用を左右する主な4つの要素について解説します。
申告内容の複雑さ
税理士費用を大きく左右する要素のひとつが、申告内容の「複雑さ」です。例えば、以下のようなケースは費用が高くなる傾向にあります。
- 複数の収入源(事業所得+不動産所得+雑所得など)がある
- 医療費控除や住宅ローン控除など、各種控除項目が多い
- 株式や仮想通貨の売買履歴がある
このように、所得の種類や控除内容が多岐にわたると、計算・確認作業に手間がかかり、費用も加算されやすくなります。
記帳の有無や量
税理士への依頼費用を考えるうえで「記帳済みかどうか」も重要なポイントです。会計ソフトで記帳を済ませていれば、税理士の作業量が減るため費用は抑えられます。
一方で、未記帳または帳簿が整理されていない場合、記帳代行が必要となり、追加費用が発生します。仕訳件数が多い場合やレシート・領収書の量が膨大な場合は、記帳費用だけで数万円にのぼるケースもあります。
面談ややりとりの頻度
税理士とのコミュニケーション回数が多いほど、業務時間が増えるため、費用に反映されることがあります。以下のような要素が影響します。
- 面談の回数(対面/オンライン)
- 書類のやりとりの頻度や方法(郵送/クラウド共有)
- 質問・相談への対応時間の多さ
定期的な相談を希望する場合は、スポット契約よりも顧問契約を検討した方が、トータルで費用対効果が高くなる場合もあります。
インボイス対応や電子帳簿保存など特別対応
2023年から導入されたインボイス制度や、電子帳簿保存法への対応も、税理士費用に影響する要素です。これらの制度に対応した帳簿や書類管理が必要になる場合、以下のような対応コストがかかることがあります。
- 電子帳簿保存のためのシステム連携サポート
- インボイス制度対応の請求書管理や記帳アドバイス
- クラウド会計ソフトとのデータ連携支援
制度対応に不安がある個人事業主は、こうしたサポートも含めて税理士に相談することで、業務効率を高めながら適正な申告が可能になります。
参考:個人が税理士に確定申告を依頼する場合の費用相場は?ケース別に分けて紹介!
確定申告を税理士に依頼するメリット

個人事業主として確定申告を行う際、「時間が足りない」「会計処理に自信がない」「節税対策が分からない」といった不安を感じている方は少なくありません。そうした悩みを解消する手段として有効なのが、税理士への依頼です。税理士に確定申告を任せることで、時間や手間の削減にとどまらず、税務リスクへの備えや節税効果といった多くのメリットが得られます。
作業時間・手間の削減
税理士に確定申告を依頼する最大のメリットのひとつが、作業負担を大幅に軽減できる点です。個人事業主が自力で確定申告を行う場合、以下のような作業が必要です。
- 領収書や請求書の整理
- 会計ソフトへの仕訳入力
- 貸借対照表や損益計算書の作成(青色申告の場合)
- 控除の確認と反映
- 確定申告書の作成と提出
これらをすべて自力でこなすには、かなりの時間と知識が必要になります。特に事業が軌道に乗ってきたタイミングでは、申告作業にリソースを割くことが大きな負担になります。
税理士に依頼すれば、帳簿のチェックから申告書の提出まで一括で任せられるため、本業に専念しながらも正確な申告を行えます。
節税につながるアドバイスが得られる
個人事業主が独自に節税対策を行うには限界があります。税制は毎年変化しており、その中で最適な控除や優遇制度を選び、合法的に節税を行うには専門知識が必要です。
税理士は税務のプロフェッショナルとして、以下のような節税のアドバイスを行ってくれます。
- 必要経費として計上可能な費用の見極め
- 青色申告特別控除の最大限の活用
- 小規模企業共済やiDeCoなどの節税商品活用の提案
- 減価償却資産の適切な処理
これにより、納税額を抑えながら、適正な申告が可能になります。「費用はかかっても、結果的に支払う税金が減る」というケースも少なくありません。
税務調査リスクへの備えになる
個人事業主として事業を続けていると、税務調査の対象になる可能性は誰にでもあります。申告内容に不備があれば、追徴課税やペナルティが発生するリスクもあるため、正確性が求められます。
税理士に依頼しておけば、税務調査に対する備えができるだけでなく、実際に調査が入った場合には税理士が対応してくれるケースも多く、安心感があります。
また、普段から税理士に申告業務を依頼していると、帳簿や申告内容の整合性が高まり、調査対象になる確率自体が下がるともいわれています。万が一のリスクを最小限に抑えるという意味でも、税理士への依頼は有効です。
確実で信頼性の高い申告が可能
税理士は国家資格を持つ税務の専門家であり、複雑な税制や申告ルールにも精通しています。確定申告においても、収支の整合性、経費計上の妥当性、各種控除の適用などをチェックしながら進めるため、内容に高い信頼性があります。
自分で申告した場合に発生しがちな「経費の過小申告」「控除の漏れ」「計算ミス」などを防げる点も大きな利点です。
特に、融資や補助金申請などで確定申告書の提出を求められる場面では、「税理士による信頼性の高い申告」であることが評価されることもあります。
参考:確定申告を税理士に依頼する際の状況別費用相場は?メリットなどもご紹介!
税理士に確定申告を依頼するデメリットと注意点

税理士に確定申告を依頼することには多くのメリットがありますが、当然ながらデメリットや注意点も存在します。ここでは、個人事業主が事前に把握しておくべきポイントを整理しておきましょう。
コストがかかる
最も大きなデメリットは、やはり「費用がかかる」という点です。税理士に確定申告を依頼する場合、スポット契約でも5万〜20万円程度、記帳代行を含めるとさらに高額になります。
顧問契約を結んだ場合は、月額1万〜3万円程度がかかるほか、確定申告期には別途申告報酬が発生します。
このように、税理士報酬は年間で数万〜数十万円に達することもあるため、費用対効果を慎重に検討する必要があります。
売上が少ない個人事業主や、経費や控除が少なく申告が簡単なケースでは、自分で申告した方が経済的といえる場合もあるでしょう。
依頼タイミングによっては受けてもらえない場合も
税理士は繁忙期である2月〜3月に集中して業務をこなしているため、申告期限が近づいてからの依頼は断られる可能性があります。特に初めて依頼する場合や記帳代行が必要な場合、1ヶ月前では対応が難しいこともあります。
そのため、確定申告を税理士に依頼する場合は、早めの相談が必須です。理想的には、前年の年末〜1月中旬までに相談を開始するのが望ましいでしょう。
また、初回の面談や契約に時間がかかる場合もあるため、時間的余裕を持って依頼の準備をしておくことが重要です。
自分で申告を学ぶ機会が減る
税理士に任せることで、確定申告に必要な知識を得る機会が減るというデメリットもあります。個人事業主として長く事業を続けていくうえで、税金や会計の基本的な知識は身につけておきたいものです。
すべてを税理士任せにすると、「自分の事業がどれだけ利益を出しているのか」「どの経費が節税につながるのか」といった判断が難しくなることもあります。
そのため、完全な丸投げではなく、申告内容や経費計上のポイントを税理士から学ぶ姿勢も大切です。信頼できる税理士であれば、税務の基礎知識を丁寧に説明してくれるケースも多いため、質問や確認を積極的に行うようにしましょう。
参考:【2025年最新】確定申告の税理士費用相場は?個人で依頼するメリット・デメリットも解説
税理士に依頼したほうがよい具体的なケース

税理士への依頼には費用が発生しますが、状況によってはそのコストを上回るメリットが得られることもあります。特に以下のようなケースでは、確定申告を税理士に依頼することで、申告ミスや税務リスクを回避しやすくなります。
売上が1,000万円を超える場合
個人事業主の年間売上が1,000万円を超えると、消費税の課税事業者になる可能性があります。免税事業者でいられるのは、原則として2期分のみで、それを超えると消費税の申告と納税が必要になります。
消費税の申告は、所得税と比べてもルールが複雑で、計算ミスが起きやすい分野です。また、インボイス制度への対応など、帳簿管理や請求書の発行方法にも変更が必要になるため、事業者の負担が増加します。
売上が1,000万円を超えたタイミングで税理士に確定申告を依頼すれば、消費税への対応を含めた正確な申告ができ、事業全体の税務リスクも大きく軽減できます。
所得が高く税務リスクも大きい場合
所得が増えるほど、適用される所得税率は段階的に上がっていきます。たとえば課税所得が695万円を超えると20%超の税率となり、住民税と合わせた実効税率も高くなります。
このような高所得者は、節税対策を適切に行うことで大きな税負担軽減が可能です。ところが、控除の選び方や経費の扱い方を間違えると、逆に税務署から指摘を受けるリスクも高まります。
税理士であれば、合法的かつ効果的な節税策を提案してくれるため、無駄な税金を払わずに済む可能性が高まります。また、高所得者は税務調査の対象になりやすい傾向があるため、信頼性の高い申告を行う意味でも、税理士のサポートが有効です。
相続や譲渡など複雑な所得がある場合
事業所得以外にも、不動産の譲渡所得や株式の売却益、相続による資産取得などがある場合は、申告内容が非常に複雑になります。
これらの所得には、それぞれ特有の税制ルールや控除制度があり、知識がないまま自力で対応すると申告ミスのリスクが高くなります。
たとえば、譲渡所得は取得費の計算や所有期間による税率の違い、特別控除の適用など、多くの判断が必要です。また、相続が発生した場合には、準確定申告や相続税の申告が必要になることもあります。
こうした特殊な所得がある場合は、個人事業主であっても税理士に確定申告を任せるべきタイミングです。専門的な知見を持つ税理士に依頼することで、正確かつ有利な申告が可能になります。
税理士の選び方と比較ポイント

税理士に確定申告を依頼する際、ただ費用が安いからという理由だけで選んでしまうと、後から「思っていたサービスと違った」「連絡が取りにくい」などのトラブルにつながる可能性もあります。ここでは、個人事業主が税理士を選ぶ際に重視すべき4つのポイントを解説します。
自分の業種・状況に詳しいか
税理士にも得意・不得意な業種があります。たとえば、IT系のフリーランスと飲食業では、経費の種類や帳簿の扱いが大きく異なります。自分の業種に詳しい税理士を選べば、節税につながるポイントや業界特有の処理について的確なアドバイスが期待できます。
また、個人事業主として開業したばかりの方であれば、「初めての青色申告に強い」「開業支援に詳しい」といった税理士を選ぶことで、手続き面でも安心感があります。
契約前には、過去に対応したクライアントの業種や実績を確認し、「自分と似た立場の事業者に対応した経験があるか」をチェックしましょう。
料金体系や対応スピードは適切か
税理士報酬の料金体系は事務所ごとに異なり、見積もり内容もさまざまです。スポット契約の場合は「確定申告一式◯万円」という形が多い一方で、顧問契約では「月額+申告報酬」が発生するのが一般的です。
見積もりを受けたら、「何が含まれていて何がオプションなのか」を明確に確認しましょう。記帳代行や消費税申告、年末調整、法人成りの相談などが別料金である場合も多いため、事前に想定しておくことが大切です。
また、対応スピードやレスポンスの早さも重要です。確定申告の期限は決まっているため、質問への返答が遅いと不安が募ることも。やりとりがスムーズかどうかは、初回の面談やメールのやりとりから判断しましょう。
相談のしやすさ・相性の良さ
確定申告は一度きりの手続きではなく、毎年発生するものです。そのため、税理士との関係性は長期的な付き合いになることも少なくありません。
その意味で、「話しやすい」「説明がわかりやすい」といった人柄や相性は、実は非常に重要です。いくら知識が豊富でも、話を聞いてくれなかったり、高圧的だったりすると、継続的な依頼は難しくなります。
初回相談の際には、こちらの話をしっかり聞いてくれるか、専門用語をかみ砕いて説明してくれるかなど、「コミュニケーションの質」も確認しましょう。
複数見積もりでの比較のすすめ
税理士を選ぶ際は、最低でも2〜3件の事務所に見積もりを依頼することをおすすめします。費用の相場感を知るだけでなく、それぞれの対応や強み、提案内容を比較することで、自分に最も合った税理士を選ぶことができます。
最近では、税理士紹介サービスやマッチングサイトを通じて、条件に合う税理士を探し、無料で見積もりを依頼することも可能です。こうしたサービスを活用すれば、地域や業種、希望サービスに応じた最適な税理士に出会える可能性が高まります。
また、見積もり比較の際には、「費用だけでなく、対応内容や信頼性も含めて総合的に判断する」ことが大切です。安さだけを重視して選ぶと、後にトラブルや不満が生じる可能性があります。
参考:個人事業主が税理士に依頼するときの相場は?費用を抑える方法も
税理士への依頼の流れとスケジュール感

個人事業主が税理士に確定申告を依頼する場合、どのような手順で進めるのかを事前に把握しておくことで、スムーズにやり取りができます。ここでは、税理士に依頼する際の基本的な流れとスケジュール感を紹介します。
依頼範囲とスケジュールを決める
最初に行うべきは、「どこまで税理士に依頼するか」を明確にすることです。たとえば、
- 確定申告書の作成のみ依頼したいのか
- 記帳や領収書の整理からすべて依頼したいのか
- 消費税や青色申告も含めた申告を依頼したいのか
など、業務範囲を明確にしておくことで、見積もりやスケジュールも正確になります。
また、確定申告の提出期限は毎年3月15日(土日祝の場合は翌平日)に設定されており、その前に申告を完了させる必要があります。年明けの1月〜2月は税理士事務所が非常に混み合うため、12月中〜1月上旬には依頼を開始するのが理想的です。
見積もりを取り、契約する
依頼内容が固まったら、複数の税理士に見積もりを取りましょう。スポット契約か顧問契約かによっても費用が変わるため、契約形態を踏まえたうえで比較検討が必要です。
見積もりの際には、以下の点を確認するのがポイントです。
- 費用に含まれる業務範囲
- 記帳代行や消費税申告の有無
- 追加費用が発生するケースの説明
- 納期や対応スケジュール
見積もりに納得したら、業務委託契約書や業務内容の確認書を取り交わし、正式に依頼をスタートします。
必要書類の準備と共有
契約後は、税理士に申告業務を進めてもらうために、必要な資料をまとめて提出する必要があります。一般的に以下のような書類が求められます。
- 売上に関する資料(請求書控え、売上台帳)
- 経費に関する資料(領収書、クレジットカード明細)
- 銀行通帳のコピー
- 青色申告決算書の控え(継続事業者の場合)
- 前年の申告書一式(過去のデータがある場合)
資料は紙で渡すだけでなく、クラウドストレージや会計ソフトのデータ共有機能を使って提出することも可能です。税理士とスムーズにやり取りできるよう、提出期限やファイル形式を事前に確認しておきましょう。
完成した申告書の確認と提出
税理士による作業が完了すると、確定申告書のドラフト(下書き)が提示されます。内容に誤りがないか、控除の漏れがないかなどをチェックし、必要があれば修正を依頼します。
最終的に確認が完了すれば、税理士がe-Taxを通じて電子申告を行うか、郵送・窓口提出のサポートをしてくれます。
申告完了後には、納税方法(振替・口座引落・窓口納付など)についても案内があるため、安心して手続きを進められます。
参考:【2025年】確定申告の税理士費用の相場はいくら?税理士に依頼するメリットや選び方を解説
税理士費用を抑えるコツ

税理士に確定申告を依頼することで多くのメリットが得られますが、費用面を重視する個人事業主にとっては「なるべくコストを抑えたい」というのが本音かもしれません。ここでは、確定申告の税理士費用を抑えるための具体的なコツを紹介します。
記帳は自分で対応する
税理士費用の中でも特に高くなりやすいのが記帳代行費用です。領収書や請求書から一つひとつ仕訳を起こしてもらう場合、年間3万〜10万円程度の追加費用が発生することも珍しくありません。
しかし、近年は会計ソフトの普及により、初心者でも比較的簡単に記帳が可能になっています。特に「freee」や「マネーフォワードクラウド」などのクラウド会計ソフトは、銀行やクレジットカードと連携して自動で仕訳を提案してくれるため、経理の知識がなくても最低限の記帳が行えます。
記帳部分だけでも自力で対応できれば、税理士には「申告書の作成と提出」だけを依頼することができ、費用を大きく抑えることが可能です。
単発での相談をうまく使う
税理士との契約形態には「スポット契約(単発)」と「顧問契約(継続)」があります。コストを抑えたい場合は、確定申告時期だけの単発契約を選ぶのが有効です。
また、確定申告の直前でなくても、税制改正や節税対策についての単発の税務相談(1回5,000〜1万円程度)を活用するのもおすすめです。
たとえば、「小規模企業共済を使った節税ができるか?」「青色申告と白色申告のどちらが有利か?」といった内容を事前に相談しておけば、自力で申告する場合でも失敗を避けやすくなります。
早めに依頼してスケジュールの融通を利かせる
確定申告の直前(2月下旬〜3月上旬)は、税理士にとって繁忙期であり、割増料金がかかるケースもあります。また、直前の依頼だと受けてもらえない、あるいは十分な対応が受けられないという事態もありえます。
そのため、前年の12月〜1月上旬までに依頼しておくことが、結果的にコスト削減につながります。
早めにスケジュール調整ができれば、税理士側も余裕を持って対応できるため、通常料金のまま柔軟なサービスが受けられる可能性が高くなります。
参考:確定申告を税理士に依頼する際の費用相場は?メリット・デメリットも紹介
まとめ|確定申告はプロに任せて安心と効率を

個人事業主が確定申告を正確に、かつ効率的に行うには、税理士のサポートを受けるという選択肢が非常に有効です。申告に関する知識が乏しい場合でも、税理士に依頼すれば安心して本業に専念でき、ミスや漏れによるリスクも最小限に抑えられます。
確かに費用はかかりますが、時間の節約や節税効果を考えれば、十分に価値のある投資といえるでしょう。特に売上が大きい、所得が高い、特殊な所得がある個人事業主は、税理士の専門知識を活用することで、事業全体の健全な運営にもつながります。
税理士との相性やサービス内容、費用面をしっかり比較し、信頼できるパートナーを選ぶことで、確定申告はもっと楽で、もっと有利になるはずです。