個人事業主の白色申告とは?確定申告に必要な書類やメリット・デメリットを解説

個人事業主の確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類がありますが、開業初年度などで帳簿の準備が整っていない場合は、手続きが比較的シンプルな「白色申告」を選ぶ方も多いでしょう。白色申告は特別控除がない一方で、簡易な帳簿で対応できるという手軽さが魅力です。本記事では、白色申告の特徴や必要な書類、メリット・デメリットについて、初めてでもわかりやすく解説します。
白色申告とは?個人事業主のための基礎知識

白色申告の定義と特徴
白色申告とは、個人事業主が行う確定申告の一種で、青色申告とは異なり、事前の申請手続きが不要で、記帳や帳簿作成のルールが比較的簡単な申告方法です。所得がある個人事業主は原則として毎年確定申告が必要ですが、白色申告はその中でも比較的手軽に行える方法として知られています。
白色申告の最大の特徴は、単式簿記による簡易な記帳で申告が可能な点です。複式簿記や貸借対照表の作成が求められる青色申告に比べて、記帳の負担が少なく、確定申告書の作成もシンプルであることから、はじめて確定申告を行う個人事業主や、副業として事業をしている人に選ばれるケースが多いです。
なお、平成26年1月から、白色申告者にも一定の記帳・帳簿保存義務が課されています。たとえ白色申告であっても、年間の売上や経費を帳簿に記載し、それを7年間保存する必要があります。ただし、青色申告のように厳密な記帳が求められるわけではないため、Excelや市販の帳簿、クラウド会計ソフトを使って対応可能です。
白色申告では、青色申告特別控除(最大65万円)や、赤字の繰越・繰戻し、家族への給与を経費にできる「青色事業専従者給与」などの特典を受けることはできません。その一方で、記帳の手間や事務的負担が少ないため、規模の小さな事業者や経理に不慣れな人には取り組みやすい選択肢です。
白色申告に向いている個人事業主のタイプ
白色申告は、以下のような個人事業主にとって特に適しています。
開業したばかりで収入が少ない人
起業直後は経費が多く、売上が安定しないことが多いため、税制上の控除が大きく影響しにくいケースが少なくありません。そうした場合には、事務手続きが簡単な白色申告が適しています。
副業として小規模に事業を行っている人
本業の会社員としての所得があり、副収入として個人事業をしている場合、事業所得が少額であれば、青色申告のメリットがあまり享受できません。記帳や手続きが簡単な白色申告のほうが効率的です。
記帳や簿記に不慣れな人
青色申告は複式簿記に基づいた帳簿をつける必要があり、仕訳や勘定科目の知識が必要です。簿記に自信がない、または初めて確定申告をする場合、白色申告の方が始めやすいでしょう。
すでに税額が発生しないほど利益が少ない人
所得控除によって所得税がかからない、あるいは課税対象が極めて少ない場合、青色申告特別控除などのメリットを活用する必要性が低いため、シンプルな白色申告で十分です。
確定申告の経験がなく、まずは制度に慣れたい人
白色申告は、会計ソフトや国税庁の「確定申告書作成コーナー」を使えばスムーズに書類作成が可能です。将来的に青色申告に切り替えることもできるため、まずは白色申告からスタートして税制や記帳に慣れるというのも一つの方法です。
一方で、利益が増えてきた人や経費をしっかり計上して節税をしたいと考えている人には、青色申告への移行を検討することが推奨されます。白色申告は簡便ではありますが、税制上の優遇措置が限られているため、長期的な事業運営を視野に入れる場合は、青色申告のメリットを受けられる体制づくりも重要です。
参考:白色申告とは?流れ・やり方・記帳方法を解説【個人事業主・フリーランスの確定申告】
青色申告との違いとは?白色申告を選ぶ理由

青色申告との主な違い5つ
個人事業主が確定申告を行う際には、「青色申告」と「白色申告」のいずれかを選択することになります。この2つには手続き・記帳方法・節税効果・控除の有無など、さまざまな違いがあり、事業の規模や目的に応じて適切な方式を選ぶことが重要です。
以下に、白色申告と青色申告の主な違いを5つ挙げて比較します。
- 申請の有無
白色申告は、開業届を提出すれば誰でも選択できます。一方、青色申告を行うためには、事前に「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。提出期限は原則として開業日から2ヶ月以内、もしくは適用を希望する年の3月15日までです。 - 記帳方法の違い
白色申告は「単式簿記」での記帳が認められており、家計簿のように現金の出入りを記録するだけで済みます。これに対して、青色申告は「複式簿記」が必要で、仕訳帳や総勘定元帳の作成、貸借対照表や損益計算書の作成も求められます。会計知識がある人や会計ソフトを使いこなせる人には青色申告が適しています。 - 特別控除の有無
青色申告では、正しい手続きと記帳を行えば最大65万円の青色申告特別控除を受けることができます。一方、白色申告にはこうした特別控除はありません。そのため、課税所得が多い人ほど青色申告の方が節税効果が高くなります。 - 赤字の繰越・繰戻し
青色申告をしている個人事業主は、事業で発生した赤字を翌年以降最大3年間繰り越すことができ、過去に遡って還付を受ける「繰戻し」も可能です。これにより、翌年黒字になった場合でも納税額を抑えることができます。白色申告にはこうした措置はありません。 - 家族への給与の取扱い
青色申告者が事業専従者(家族など)に支払う給与は、一定の条件を満たすことで全額を必要経費として計上可能です。これを「青色事業専従者給与」といいます。白色申告では、一定の上限を設けた「事業専従者控除」があるものの、支払った額のすべてを経費にできるわけではありません。
青色申告と白色申告の主な違いは以下にもまとめています。参考にしてください。
このように、青色申告には手間がかかる分、節税につながる優遇措置が多く用意されている一方、白色申告は手続きが簡易で記帳負担も軽いという利点があります。
白色申告が適しているケースとその理由
白色申告は以下のような状況にある個人事業主に適しているといえます。
- 事業所得が少なく、控除の恩恵が小さい場合
事業収入が年間100万円以下、または利益がごく少ない場合、青色申告の特別控除(最大65万円)を適用しても実際の節税効果がほとんどないケースがあります。このような場合、記帳が簡単な白色申告の方が合理的です。 - 開業して間もない個人事業主
開業初年度は経費が多く、収支が安定しないことも珍しくありません。また、確定申告に関する知識がまだ浅い段階では、青色申告の複雑さが負担になることがあります。まずは白色申告で確定申告の流れや記帳に慣れ、翌年以降に青色申告へ切り替えるというステップも効果的です。 - 副業として事業を行っている場合
会社員としての本業があり、副業として小規模に事業をしているケースでは、手続きの簡易さが優先されることが多いです。青色申告に必要な時間や手間をかける余裕がない場合は、白色申告の方が現実的です。 - 会計や簿記の知識があまりない人
青色申告では複式簿記による記帳が求められ、経理に関する一定の知識が必要です。一方、白色申告であれば、単式簿記で記帳が可能なため、初心者でも取り組みやすいです。市販の帳簿やクラウド会計ソフトを活用すれば、難しい仕訳作業なしで申告を終えることができます。 - 青色申告の申請時期に間に合わなかった人
青色申告の申請書は、開業後2ヶ月以内またはその年の3月15日までに提出しなければなりません。この期限を過ぎてしまった場合、当年分の申告は白色申告しか選択できません。翌年以降に青色申告へ変更するまでの間は、白色申告で対応する必要があります。
白色申告は、確定申告のハードルを下げ、個人事業主がスムーズに納税義務を果たせる制度です。税制上の優遇措置が少ないとはいえ、所得が少ない場合や申告に慣れていない場合には十分な選択肢となります。
参考:【個人事業主の確定申告】青色申告と白色申告どちらを選ぶ?
白色申告のメリット・デメリット

白色申告の主なメリット
白色申告は、個人事業主にとって確定申告を手軽に行える方法として広く利用されています。青色申告に比べて制度上の優遇は少ないものの、次のようなメリットがあるため、特に小規模な事業者や初心者に向いています。
- 事前申請が不要で、すぐに始められる
白色申告は、開業届を税務署に提出すれば誰でも行える申告方法であり、青色申告のように事前に「青色申告承認申請書」を出す必要がありません。そのため、開業して間もない個人事業主や、申告期限が迫っている状況でもスムーズに確定申告を進めることができます。 - 記帳方法がシンプルで簡単
白色申告では「単式簿記」での記帳が認められており、現金の出入りをそのまま記録するだけで基本的な帳簿が完成します。複雑な仕訳や帳簿の作成が不要なため、簿記や会計の知識がない方でも、手書きの帳簿やExcel、クラウド会計ソフトなどを使って対応できます。 - 確定申告書の作成が簡単
白色申告の場合、作成する書類は主に「収支内訳書」と「確定申告書B」の2つのみです。青色申告に比べて提出書類が少なく、作成項目も比較的少ないため、作業にかかる時間や労力が軽減されます。 - 柔軟な対応が可能
白色申告は簡易な制度であることから、副業や一時的な事業収入にも対応しやすく、事業の規模や業種を問わず利用できます。また、青色申告への切り替えも翌年度から行えるため、まずは白色申告で確定申告に慣れるという選択肢も現実的です。 - 税務署からの指導も比較的穏やか
白色申告は、税務署側も「初めての個人事業主」が行うことを前提としているため、細かい記帳ミスや形式の不備に対しても、青色申告よりは柔軟に対応してもらえる傾向があります。もちろん正確な記帳と提出が原則ですが、心理的なハードルが低い点もメリットです。
これらの理由から、白色申告は「初めて確定申告をする個人事業主」や「事業収入が少ないフリーランス・副業ワーカー」にとって、非常に扱いやすい選択肢といえます。
参考:白色申告とは?青色申告との違いやメリット・やり方を解説
白色申告のデメリットと注意点

一方で、白色申告にはいくつかのデメリットも存在します。記帳や提出は簡単であるものの、長期的に見た場合や収入が増えてきた場合には不利になる場面もあるため、注意が必要です。
- 特別控除がない
白色申告では、青色申告のように「青色申告特別控除(最大65万円)」を受けることができません。これにより、同じ所得でも青色申告者に比べて課税所得が多くなり、納める税金の額が増える可能性があります。 - 赤字の繰越・繰戻しができない
事業が赤字になった場合、青色申告であればその赤字を翌年以降に繰り越したり、過去の黒字と相殺して税金を還付してもらう「損益通算・繰戻還付」が可能です。しかし、白色申告ではこれらが認められないため、損失を税金面で有利に活用することができません。 - 家族に支払った給与を全額経費にできない
青色申告の場合、家族への給与を「青色事業専従者給与」として必要経費に全額計上することができますが、白色申告では上限付きの「事業専従者控除」しか認められておらず、経費に計上できる金額が制限されます。 - 記帳義務と帳簿保存義務がある
「白色申告=帳簿がいらない」と誤解されがちですが、平成26年以降、白色申告でも記帳義務と7年間の帳簿保存義務が課されています。これを怠ると税務調査で不利な扱いを受ける恐れがあるため、記帳ルールの理解と実践は欠かせません。 - 将来的な節税には不向き
個人事業が成長し、所得が増えてくると、青色申告で得られる特典の方がはるかに有利になります。白色申告では、税金対策の幅が狭く、長期的な観点から見ると不利になるケースが多いため、将来のビジョンに応じた申告方法の見直しが必要です。
以上のように、白色申告は手軽に始められる反面、節税効果や税務上の優遇が限定的であるという側面もあります。特に事業収入が安定してきた場合や、税務的なメリットを最大限に活用したい場合は、青色申告への移行を検討するのが賢明です。
白色申告に必要な書類一覧
個人事業主が白色申告で確定申告を行う場合、税務署に提出すべき書類や、申告内容の根拠となる書類を事前にしっかりと準備しておくことが大切です。白色申告に必要な書類はそれほど多くありませんが、正確に記入し、期限内に提出することが求められます。
ここでは、白色申告を行う個人事業主が用意すべき3つの主要書類について解説します。
確定申告書B(第一表・第二表)
白色申告を行うすべての個人事業主は、「確定申告書B」を提出する必要があります。この申告書は、給与所得や事業所得など、すべての所得区分に対応した汎用的な書式であり、以下の2枚で構成されています。
- 第一表:申告者の基本情報(氏名・住所・マイナンバーなど)や、収入金額・所得金額・控除額・税額・納付額・還付額などを記入するページです。税額の計算結果がまとめられているため、最終的な納税額や還付金額が確認できる重要な書類となります。
- 第二表:各所得の内訳や、社会保険料控除・生命保険料控除・扶養親族などの情報を記入するページです。特に控除の内容によって税額が大きく変わるため、記入ミスのないよう正確に申告することが求められます。
この確定申告書Bは、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」や、会計ソフトを使って作成・出力することができます。また、税務署で配布されている用紙を使って手書きで作成することも可能です。
収支内訳書の構成と記入項目
白色申告をする個人事業主は、確定申告書Bに加えて「収支内訳書(一般用)」を作成・提出する必要があります。これは、その年の事業に関する売上や経費などの収支をまとめた書類で、1年分の事業活動の詳細が記載される帳票です。
収支内訳書は以下のような構成になっています。
【1ページ目の主な記入項目】
- 売上(収入)金額
事業によって得た売上や収入の総額を記入します。請求書の合計額や入金記録を基に正確に記載しましょう。 - 仕入金額
商品を仕入れた場合の費用を記入します。サービス業などで仕入がない場合は空欄になります。 - 経費の内訳
通信費、交通費、外注費、水道光熱費など、事業運営にかかった必要経費をそれぞれの項目に分けて記入します。 - 専従者控除前の所得金額/所得金額
売上から経費などを差し引いた結果としての所得金額を算出・記入します。
【2ページ目の主な記入項目】
- 売上明細、仕入明細
複数の取引先がある場合、どこからどれだけの売上があったか、どこからどのような仕入れをしたかを個別に記載します。 - 減価償却費の計算欄
高額な資産を購入した場合、その費用を数年に分けて経費計上する「減価償却」の計算内容を記入します。 - 利子、地代家賃、その他の内訳
利息の支払いや、事務所や店舗などの家賃の支払いがある場合に記入します。
収支内訳書の正確な記入のためには、日頃の帳簿付けや領収書の整理が重要です。後からまとめて記入するのではなく、日々の取引をこまめに記録する習慣をつけましょう。
添付が必要な証明書類(控除証明書など)
白色申告では、所得控除や税額控除を受ける際に、該当する証明書類を添付する必要があります。主な添付書類は以下の通りです。
これらの添付書類は、原則として確定申告書に添付するか、e-Taxを利用する場合はスキャンデータやマイナンバーカード方式などで提出します。必要書類が不足していたり、添付忘れがあると、控除が適用されずに本来より多くの税金を支払うことになるため注意しましょう。
白色申告のやり方と手順

個人事業主が白色申告で確定申告を行うためには、決まった流れに従って書類を作成・提出する必要があります。白色申告は青色申告に比べて記帳や作成書類がシンプルであり、初めて確定申告を行う個人事業主でも比較的スムーズに進めやすいのが特長です。
ここでは、白色申告の基本的なやり方を3つのステップに分けて詳しく解説します。
ステップ1:帳簿作成(単式簿記)の基本
白色申告では、「簡単だから帳簿はいらない」と誤解されがちですが、実際には記帳義務があり、帳簿の保存も必要です。2014年の税制改正以降、白色申告者にも記帳・帳簿保存が義務付けられています。
白色申告で求められる帳簿は、単式簿記という簡易的な方法で記録するもので、現金の出入り(収入・支出)を記録するだけで完結するのが特徴です。主な帳簿としては以下のものがあります。
- 収入帳:事業で得た売上や報酬などを日付順に記録します。
- 支出帳(経費帳):通信費・交通費・仕入代・家賃など、事業に関わる支出を記録します。
- 現金出納帳:現金の入出金の流れを記録する帳簿で、現金管理の基礎になります。
記帳は、ノートや市販の帳簿、Excel、会計ソフトなど、形式は自由ですが、記載内容には正確さが求められます。クラウド会計ソフトを活用すれば、自動仕訳やレポート作成にも対応できるため、記帳の効率が大きく向上します。
また、帳簿や領収書は7年間の保存義務があるため、確定申告後も捨てずにしっかり保管しておきましょう。
ステップ2:収支内訳書・確定申告書の作成
帳簿が整ったら、次に行うのが確定申告書類の作成です。白色申告では以下の2つの書類が必要です。
- 収支内訳書(一般用)
帳簿に記録した売上・仕入・経費などをもとに、1年間の事業の収支をまとめます。減価償却費や専従者控除などもこの書類に反映されます。 - 確定申告書B(第一表・第二表)
収支内訳書で算出した所得金額をもとに、最終的な納税額または還付額を計算して記入します。第一表には収入や所得、税額などの総括を、第二表には所得の内訳や控除の詳細を記載します。
これらの書類は、以下のいずれかの方法で作成することが可能です。
- 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」
画面の指示に従って入力するだけで、自動的に書類を作成できます。e-Taxとの連携も可能です。 - 確定申告ソフト・クラウド会計ソフト
帳簿データと連動して自動的に申告書を作成できるため、非常に効率的です。freeeやマネーフォワードなどが代表的なサービスです。 - 手書きで作成
税務署や国税庁のWebサイトから用紙を入手し、自分で手書きする方法です。時間がかかるうえに計算ミスのリスクもあるため、初心者にはあまり推奨されません。
記入が終わったら、社会保険料控除証明書や生命保険料控除証明書などの添付書類もあわせて準備しましょう。
ステップ3:提出方法の選択(e-Tax・郵送・持参)

書類の準備ができたら、いよいよ確定申告書の提出です。提出方法は大きく分けて3つあります。
- e-Tax(電子申告)で提出
インターネット上で申告手続きを完結できる方法です。マイナンバーカードまたはID・パスワード方式を使ってログインし、データを送信するだけで申告が完了します。税務署に行く必要がなく、還付も早く受け取れるため、多くの個人事業主に利用されています。 - 郵送で提出
作成した申告書を印刷し、必要書類を添付して税務署へ郵送する方法です。控えを返送してもらうためには、返信用封筒と切手も同封しておきましょう。提出期限内(例年3月15日必着)に確実に届くよう、余裕を持って発送することが重要です。 - 税務署の窓口に持参して提出
税務署に直接書類を持参する方法です。書類の確認や質問もその場でできるメリットがありますが、提出期限が近づくと窓口が混雑するため、早めの対応が望まれます。
いずれの方法でも、提出期限を過ぎると「無申告加算税」や「延滞税」が課されるリスクがあるため、毎年の提出期間(例年2月16日~3月15日)を把握し、余裕を持って準備を進めましょう。
白色申告のやり方は比較的シンプルですが、帳簿作成から書類作成、提出までには一定の時間と労力が必要です。特に確定申告の直前になると会計ソフトや税務署の混雑も発生するため、早めの準備が成功の鍵となります。個人事業主としてスムーズに白色申告を終えるためにも、日々の記帳と定期的な見直しを習慣づけましょう。
書類の作成方法:手書き・ソフト・e-Tax対応
白色申告の書類作成は、方法によって作業の手間や正確性が大きく異なります。個人事業主の状況やスキルに応じて、最適な方法を選ぶことがポイントです。ここでは、3つの代表的な方法について解説します。
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使う方法
もっとも多くの個人事業主が利用しているのが、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」です。インターネット上で確定申告書類を作成できる無料のサービスで、申告に必要な項目を画面の案内に沿って入力するだけで、収支内訳書や確定申告書Bなどを自動的に作成できます。
主な特徴は以下のとおりです。
- 所得や控除の金額を自動計算してくれる
- 作成したデータをそのままe-Taxで提出可能
- 印刷して郵送・持参で提出も可能
- 年度ごとの法改正にも対応しており、安心して使える
パソコン操作に慣れていない方でも、画面がわかりやすく設計されているため、初めての白色申告でも比較的スムーズに進められます。
確定申告ソフト・アプリを使う方法
クラウド会計ソフトやスマートフォン向けのアプリを使えば、帳簿の記帳から申告書類の作成、さらには電子申告までを一貫して行うことができます。代表的なソフトには「freee会計」や「マネーフォワード クラウド確定申告」などがあります。
これらのソフトを使うメリットは以下の通りです。
- 日々の取引を自動で仕訳・集計
- 銀行口座やクレジットカードと連携して記帳を効率化
- 各種控除の自動判定やアラート機能付き
- e-Taxに完全対応、マイナンバーカード連携もスムーズ
初心者でも「○×形式の質問に答えるだけ」で申告書が完成する機能を搭載しており、時間と手間を大幅に削減できます。費用はかかりますが、節税や業務効率を重視する個人事業主には非常に有効な選択肢です。
手書きで作成する際の注意点
会計ソフトやオンラインツールに不安がある場合、書類を手書きで作成する方法もあります。税務署で配布されている用紙や国税庁のサイトから印刷した用紙を使い、自筆で記入していきます。
しかし、手書きで行う場合は次の点に注意が必要です。
- 計算ミスのリスクが高くなるため、電卓やチェック表を使って慎重に作業する
- 控除証明書や添付書類の漏れに注意する
- 記入ミスや訂正跡があると、税務署から問い合わせを受ける可能性がある
- 提出用と控え用の2部作成し、控えには税務署の受付印をもらう必要がある
また、提出期限間近になると税務署窓口は非常に混雑するため、郵送での提出を希望する場合は余裕をもって対応することが重要です。
参考:白色申告とは?やり方やメリット、青色申告との違いを解説
白色申告で気をつけたいポイント

白色申告は、個人事業主が比較的簡単に確定申告を行える方法として広く知られています。しかし、制度が簡素である一方で、基本的なルールを守らなければペナルティの対象になることもあるため、注意が必要です。このブロックでは、白色申告を行う上で特に気をつけたい3つのポイントを解説します。
記帳の義務と保存期間
2014年(平成26年)から、白色申告であっても記帳義務と帳簿等の保存義務が法的に課されるようになりました。これは、税制改正によって制度が強化されたことによるもので、すべての個人事業主に適用されます。
具体的には、以下の2つが求められます。
- 帳簿の作成(記帳)
売上・経費・取引先などの情報を、日々記録する必要があります。単式簿記(現金の出入りを記録)で構いませんが、収入帳・支出帳・現金出納帳などをきちんと整備しておく必要があります。 - 帳簿の保存
作成した帳簿や領収書、請求書などの証拠書類は、原則として7年間保存する義務があります。これは、後日税務署が内容を確認する際に必要となるため、誤って破棄してしまわないよう注意が必要です。
保存形式については、紙でも電子データでも構いませんが、電子データの場合は所定の保存要件(改ざん防止措置など)を満たす必要があります。
経費計上のルールと仕訳の基本
白色申告では、事業にかかった経費を正確に計上することで、所得金額を減らし、結果的に納税額を抑えることが可能です。ただし、経費として認められる支出にはルールがあり、仕訳の誤りがあると否認されるリスクもあります。
経費に関して気をつけるべき点は次の通りです。
事業に直接関連する支出のみが経費として認められる
たとえば、打ち合わせの飲食費や事業で使用する機材・ソフトウェア代などは経費になりますが、プライベートな支出や家族旅行などは対象外です。私用と事業用が混在する支出(例:スマホ代)については、按分して記帳します。
領収書や請求書を必ず保管する
経費として計上した金額の根拠を証明するために、領収書やレシートは必ず保管しておきましょう。電子領収書も有効ですが、こちらも保存要件を満たす必要があります。
勘定科目を適切に選ぶことが大切
記帳の際には、「通信費」「消耗品費」「接待交際費」など、勘定科目を正しく使い分けることが求められます。不明な場合は、国税庁のWebサイトや会計ソフトのガイドを参照しましょう。
仕訳の基本を理解しておく
白色申告では単式簿記が認められていますが、仕訳帳への記載や帳簿への転記など、基本的な処理の流れを押さえておくことが必要です。クラウド会計ソフトを使えば、取引内容を入力するだけで仕訳が自動処理されるため、初心者にもおすすめです。
参考:個人事業主は白色申告を選んでも良い?青色申告との違いも解説
税務調査のリスクと対応策

白色申告だからといって税務調査の対象にならないわけではありません。むしろ、記帳や証憑の管理が甘くなりがちな白色申告者ほど、税務署からの調査対象になりやすい傾向があります。
税務調査では以下のような点がチェックされます。
- 売上の申告漏れや過少申告がないか
- 不適切な経費計上や、プライベート費用の混入
- 帳簿と証拠書類の整合性
調査の際に不備が発覚すると、追徴課税や加算税、延滞税などのペナルティを受ける可能性があります。これを防ぐためには、以下のような対策が有効です。
- 日々の記帳を正確に行う
後からまとめて記帳するとミスが発生しやすいため、取引が発生したその日に記録する習慣を持つことが大切です。 - 領収書や証明書はすべて保管する
スキャン保存でも問題ありませんが、必要な項目(取引先名・金額・日付・内容など)が明記されていることを確認しましょう。 - 申告内容に自信がない場合は税理士に相談する
自分の判断だけで申告を進めるのが不安な場合は、税理士に確認してもらうのも一つの方法です。特に開業初年度や、急に売上が増えた年などは、専門家のアドバイスが役立ちます。
個人事業主の白色申告に関するよくある質問

開業届を出していなくても白色申告できる?
原則として、個人事業主が確定申告を行うためには、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」を提出していることが前提です。ただし、開業届を提出していない場合でも、実際に事業を行っていて所得があるならば、確定申告(白色申告)は義務として求められます。
とはいえ、開業届を出していないと、税務署から事業実態を問われる可能性があるほか、青色申告の申請もできないため、開業届は早めに提出しておくことをおすすめします。
途中で青色申告に切り替えることはできる?
はい、可能です。白色申告から青色申告への切り替えは、所定の期限までに「青色申告承認申請書」を税務署へ提出することで翌年から適用可能です。新規開業者の場合は、開業日から2ヶ月以内に申請すれば、初年度から青色申告が可能です。
記帳に慣れ、節税効果を高めたいと考えるようになったタイミングで、翌年から青色申告へスムーズに移行できるよう、事前に帳簿付けなどの準備を進めておくと良いでしょう。
白色申告で節税はできる?
白色申告には青色申告のような特別控除や赤字の繰越といった大きな節税メリットはありません。しかし、適切に経費を計上することで、課税所得を抑え、結果的に税金を軽減することは可能です。
通信費、交通費、消耗品費など、事業に関わる支出を漏れなく経費として計上することが、白色申告でできる現実的な節税策です。日々の記帳を徹底し、領収書を保管することで、必要な経費を正しく申告しましょう。
参考:フリーランスの白色申告ガイド!やり方・必要書類・記入のポイントを解説
個人事業主の白色申告のまとめ

白色申告は、個人事業主が確定申告を行う際のシンプルな選択肢として、記帳や手続きの負担が軽く、開業初期や副業収入がある人に向いています。必要な書類は「確定申告書B」「収支内訳書」「控除証明書」などで、国税庁サイトや会計ソフトを活用すれば効率的に作成可能です。
ただし、記帳義務や帳簿保存義務は白色申告でも課されているため、正確な管理が欠かせません。また、将来的な節税を考える場合は、青色申告への切り替えも視野に入れておくと良いでしょう。
白色申告の制度を正しく理解し、自分に合った方法で確定申告を進めることが、継続的な事業運営と信頼の第一歩になります。