ふるさと納税をした個人事業主の確定申告とは?メリットや注意点を解説

個人事業主でも「ふるさと納税」を活用すれば、実質2,000円の自己負担で地域の返礼品が受け取れ、節税効果も期待できます。ただし、会社員とは異なり「ワンストップ特例制度」は利用できず、確定申告が必須となる点に注意が必要です。本記事では、ふるさと納税を行った個人事業主が確定申告ですべき手続きや控除の受け方、メリットや注意点についてわかりやすく解説します。
ふるさと納税とは?仕組みと基本をおさらい

ふるさと納税の概要と目的
ふるさと納税とは、居住地以外の自治体に寄附を行うことで、所得税や住民税の控除が受けられる制度です。2008年にスタートしたこの制度は、地域活性化や地方創生を目的としています。寄附先の自治体は自由に選べるため、個人が「応援したい地域」に対して直接支援できるのが最大の特徴です。
特に、個人事業主にとっては、返礼品を受け取れるだけでなく、確定申告での節税メリットがある点が注目されています。確定申告の際に「寄附金控除」として申告すれば、所得控除・税額控除の対象となり、実質的に自己負担2,000円で地域の特産品を受け取ることが可能になります。
会社員であれば「ワンストップ特例制度」という簡易な控除手続きも可能ですが、個人事業主は原則として確定申告が必要となります。したがって、ふるさと納税を活用するには、その仕組みと流れをきちんと理解しておくことが重要です。
控除される税金の種類(所得税・住民税)
ふるさと納税を行うと、所得税と住民税の2種類の税金が控除対象となります。控除の内訳は次の通りです。
- 所得税:ふるさと納税を行った年の所得から控除される「所得控除」の形で反映されます。具体的には「寄附金控除」として、総所得金額から差し引かれます。還付される金額は、確定申告後に指定の銀行口座に振り込まれます。
- 住民税:ふるさと納税を行った翌年度の住民税から「税額控除」として差し引かれます。これは6月以降に届く住民税の通知書に反映され、実際に納める住民税が軽減されます。
特に個人事業主は所得の変動が大きいため、住民税の金額も毎年変動します。したがって、ふるさと納税による控除効果を最大限に活かすためには、自身の所得や課税対象額を正確に把握する必要があります。加えて、控除される金額には「上限」があるため、それを超えて寄附してしまうと、超過分は控除されません。
控除上限額の計算には、各ふるさと納税ポータルサイトが提供している「控除上限額シミュレーションツール」を活用するのが効果的です。
自己負担額2,000円のルール
ふるさと納税の制度において、よく言われるのが「実質2,000円の自己負担で地域の返礼品がもらえる」という点です。この仕組みは、次のようになっています。
仮に年間5万円をふるさと納税で寄附した場合、その年の確定申告で所得税から一部が還付され、翌年の住民税が減額されます。最終的に、寄附額のうち48,000円分が控除され、自己負担は2,000円となるのです。
ただしこの「2,000円の自己負担」は、控除上限額の範囲内で寄附した場合に限られます。上限を超える寄附についてはその超過分が自己負担扱いとなり、税額控除の対象にはなりません。特に収入が不安定になりがちな個人事業主にとっては、前年の所得を参考に上限額を慎重に計算する必要があります。
また、税務上、ふるさと納税は「寄附金」として扱われるため、経費として計上することはできません。返礼品を受け取る場合も、課税対象とはならないのが通常ですが、内容や金額によっては注意が必要なケースもあります。
個人事業主がふるさと納税を活用するメリット

個人事業主として活動していると、経費の管理や税務処理など、日々の業務に加えて「節税対策」も重要なテーマになります。その中でも注目されているのが「ふるさと納税」です。この制度は、確定申告を行う個人事業主にとって非常に相性の良い仕組みであり、税金面での恩恵を受けながら地方を支援できる、まさに一石二鳥の制度です。
ここでは、ふるさと納税を個人事業主が活用することで得られる具体的なメリットについて解説します。
所得に応じた控除上限額が高い可能性
ふるさと納税では、所得金額に応じて控除される税金の上限額が決まります。個人事業主の場合、給与所得者よりも収入が高くなるケースや、経費で所得を圧縮して税額を調整する余地があるため、控除の上限額が高くなる傾向があります。
特に青色申告をしていて65万円の特別控除を活用している個人事業主であれば、所得をある程度コントロールできる分、ふるさと納税による節税効果も大きくなります。加えて、住宅ローン控除や医療費控除、生命保険料控除などと合わせて利用することで、より多角的な節税が可能です。
また、住民税の控除限度額は「住民税所得割額の約2割」が目安とされているため、自身の所得に応じた控除シミュレーションを行うことで、寄附可能な金額を把握しやすくなります。
ポイント:ふるさと納税の控除額は、課税所得や他の控除状況にも左右されるため、毎年の所得額をもとにシミュレーションを行うことが重要です。
参考:個人事業主のふるさと納税控除上限額は?メリットや確定申告についても解説
確定申告のついでに控除申請ができる

ふるさと納税を行った後は、「寄附金控除」として確定申告を通じて税金の控除申請を行う必要があります。会社員など給与所得者の場合、確定申告に不慣れな人も多く手間に感じがちですが、個人事業主は毎年の確定申告が必須なため、この手続きがルーチン化しやすいのが強みです。
実際の確定申告では、寄附を行った自治体から届く「寄附金受領証明書」をもとに、申告書Bの「寄附金控除」欄に金額を記載し、必要に応じて自治体名や寄附額を第二表に記載するだけで完了します。e-Taxを活用すれば、証明書の添付も電子データで完結するケースが増えており、手続きのハードルは年々下がっています。
ふるさと納税を活用すれば、所得税の還付と住民税の減額という2つのメリットを確定申告の中で同時に得ることが可能です。特に経費の管理や帳簿付けに慣れている個人事業主にとっては、非常にスムーズな申請フローが組めるでしょう。
ワンストップ特例制度は個人事業主には適用されません。ふるさと納税をしたら、必ず確定申告を忘れずに行いましょう。
地方応援と返礼品が魅力
ふるさと納税のもう一つの魅力は、なんといっても「地域の特産品を返礼品として受け取れること」です。全国の自治体が、それぞれ特色のある品を用意しており、和牛・海産物・お米・果物・日用品まで幅広いラインナップがあります。これらは、日常生活に直結する品であることも多く、家計の節約にもつながります。
例えば、個人事業主として在宅勤務をしている方なら、ふるさと納税で日用品や食品を選ぶことで、生活コストを実質的に削減することも可能です。特に家族を持つ個人事業主にとっては、節税+生活支援という面でも大きな恩恵があります。
さらに、ふるさと納税は「寄附」であることから、社会貢献や地域活性化という観点でも意味があります。都市部に住む個人事業主が、自身の故郷や応援したい地域に納税という形で貢献できる点も、他の税制優遇制度にはないユニークなポイントです。
返礼品の選び方のコツ:自分や家族の生活スタイルに合った実用的な品を選ぶことで、ふるさと納税のメリットを最大限に享受できます。
参考:個人事業主がふるさと納税をするメリットは?限度額の計算方法も解説
個人事業主がふるさと納税をする際の注意点

ふるさと納税は、節税や地域貢献、返礼品の魅力といったさまざまなメリットがある一方で、個人事業主が活用する際には注意すべきポイントもいくつか存在します。ここでは、制度を正しく利用するために押さえておくべき3つの重要な注意点を解説します。
控除上限額は収入変動により変わる
ふるさと納税で受けられる控除には「上限額」があります。この上限額は、課税所得や住民税所得割額などをもとに計算されるため、収入の変動が激しい個人事業主にとっては予測が難しい側面があります。
たとえば、前年に大きな利益が出ていたとしても、翌年の所得が減少すれば、その年のふるさと納税に対する控除額も減少します。逆に、前年の利益が少なかった年に上限額を低く見積もってしまうと、本来より少ない寄附しかできず、節税効果を最大限に活かせない場合もあります。
ポイント:控除上限額は「住民税所得割額の約2割」が目安。ポータルサイトのシミュレーターなどを使い、過去の申告データを参考にしながら余裕を持って判断するのが安全です。
ワンストップ特例制度は使えない
ふるさと納税には、「ワンストップ特例制度」と呼ばれる簡略化された手続きがありますが、これは会社員など確定申告をしない人向けの制度です。個人事業主は確定申告を行う義務があるため、この特例制度は利用できません。
そのため、ふるさと納税をした際には必ず確定申告書Bの「寄附金控除」の欄に必要事項を記載し、自治体から発行される「寄附金受領証明書」を添付、または電子申請する必要があります。これを忘れると控除が適用されず、全額自己負担になる可能性もあるため注意が必要です。
注意:ワンストップ特例制度の申請をしても、確定申告をするとその申請は無効になります。寄附したすべての自治体分を確定申告で申告しましょう。
経費にはできない(勘定科目と仕訳の注意)
ふるさと納税は「寄附金」として扱われるため、事業に関係なく支出された金銭とみなされます。そのため、個人事業主であってもふるさと納税の支出を経費として計上することはできません。
これは、たとえ返礼品が事業用で使えるものであったとしても同様で、ふるさと納税はあくまでも個人的な支出として分類されます。仕訳を行う際も注意が必要で、「寄附金」や「事業主貸」として処理するのが一般的です。
また、税務署に提出する帳簿では、誤って「接待交際費」や「消耗品費」などの経費科目で計上してしまうと、税務調査の対象となるリスクがあるため、正確な仕訳と記帳が求められます。
仕訳の例:
借方:事業主貸/貸方:普通預金(ふるさと納税の支払い)
参考:個人事業主はふるさと納税をするべき?メリット・注意点と想定される節税効果
控除上限額の目安と計算方法

ふるさと納税は、寄附金のすべてが控除されるわけではなく、あくまでも「控除上限額の範囲内」で節税が成立する制度です。特に個人事業主は、所得の変動が大きいため、控除上限額を正確に把握しておくことが重要です。ここでは、所得税・住民税の控除の仕組みから、具体的な計算方法、シミュレーションの活用法まで解説します。
所得税と住民税の控除の仕組み
ふるさと納税で受けられる控除には、所得税の「所得控除」と住民税の「税額控除」の2つがあります。
- 所得税の控除
寄附した年の総所得金額から寄附金控除として差し引かれ、税率をかけて算出された分が翌年の確定申告後に還付されます。これはふるさと納税を行った翌年の3月ごろに還付金として口座に振り込まれるのが一般的です。 - 住民税の控除
ふるさと納税を行った翌年度の住民税から「基本分(10%)」と「特例分(最大20%)」として直接減額される形で反映されます。住民税の控除は、毎年6月に届く「住民税決定通知書」で確認できます。
注意点:これらの控除を受けるには、個人事業主であるあなた自身が確定申告の際に「寄附金控除」を正しく申告することが前提です。忘れると控除は受けられません。
「住民税所得割額の2割」が基本目安
ふるさと納税で控除される金額の「上限」は、住民税所得割額の約20%(2割)が基本目安となります。この住民税所得割額は、前年の所得や各種控除の内容によって決まります。
たとえば、前年の住民税所得割額が20万円であれば、ふるさと納税での控除上限額はおおよそ4万円程度になります。ここに自己負担額2,000円を加えて、実質的に最大で42,000円分の寄附をすれば節税効果が最大化されるという計算になります。
個人事業主は、青色申告や白色申告、専従者給与の有無、経費の計上状況などで課税所得が大きく変動するため、この「2割」の目安も毎年見直す必要があります。
ワンポイント:控除額は、所得が高いほど大きくなりますが、赤字決算の場合はそもそも控除されないため、事前に損益の見通しも立てておきましょう。
シミュレーションサイトの活用方法
ふるさと納税の控除上限額は複雑な要素が絡むため、自力で正確に算出するのは難しい場合があります。そこで活用したいのが、各ふるさと納税ポータルサイトに用意されている「控除上限額シミュレーションツール」です。
以下のような情報を入力するだけで、おおまかな上限額を自動で計算してくれます:
- 年間の所得見込み
- 経費や控除の内容
- 配偶者や扶養家族の有無
- その他の税額控除(生命保険料控除、住宅ローン控除など)
代表的なポータルサイト
- さとふる
- ふるさとチョイス
- 楽天ふるさと納税
特に個人事業主の場合は、経費の計上によって課税所得が大きく変動するため、直近の確定申告書を参考に入力することで、より正確なシミュレーションが可能です。
個人事業主のふるさと納税:確定申告の手順

個人事業主がふるさと納税を活用するためには、確定申告で「寄附金控除」の申告を行うことが必須です。ふるさと納税は、ただ寄附するだけでは税金の控除が受けられないため、手順を理解したうえで正しく申告する必要があります。以下では、ふるさと納税の確定申告に必要なステップを4つの工程に分けて詳しく解説します。
ステップ①:控除上限額を確認する
まずは、自分のふるさと納税の控除上限額を確認することが第一歩です。控除上限額を超えて寄附してしまうと、超過分については自己負担となり、節税効果を最大限に活かすことができません。
個人事業主は、売上や経費、青色申告特別控除などにより課税所得が毎年変動します。そのため、前年の確定申告書や今年の収支予定をもとに、ふるさと納税のポータルサイトで上限額を試算するのが安全です。
おすすめのシミュレーター:
- ふるさとチョイス
- 楽天ふるさと納税
ポイント:住民税所得割額の約2割が目安。扶養家族の有無や他の控除(生命保険料控除・医療費控除など)も影響するため、正確に入力しましょう。
ステップ②:寄付先を選び、納税する
控除上限額を把握したら、次は寄付先の自治体を選んで実際にふるさと納税を行います。ふるさと納税は、1つの自治体にまとめて寄附する必要はなく、複数の自治体に分けて寄附することも可能です。
寄附の方法は、各ポータルサイトを通じてクレジットカードや銀行振込などで行うのが一般的です。個人事業主の場合、事業で利用する返礼品を選びたくなることもあるかもしれませんが、ふるさと納税はあくまで「個人の支出」として扱われるため、事業用の経費とは別に考えましょう。
注意点:寄附する自治体の数が6自治体以上になる場合、ワンストップ特例制度が使えないことに関係なく、確定申告で全件申告が必要です。
ステップ③:受領証明書を保管する
ふるさと納税を行うと、寄附先の自治体から「寄附金受領証明書」が発行されます。この書類は、確定申告の際に必要不可欠な証明書類であり、税額控除を受けるための根拠となるものです。
発行時期は自治体により異なりますが、通常は寄附から1か月以内に郵送されます。郵送ではなく電子発行(PDF)に対応している自治体も増えており、e-Tax申請を行う個人事業主にとっては利便性が高まっています。
受領証明書は、寄附を行った件数分届くため、複数自治体へ寄附をした場合はすべてを保管しておくことが大切です。万が一紛失してしまった場合は、再発行に対応していない自治体もあるため注意しましょう。
ステップ④:確定申告書Bに記入する方法
ふるさと納税の控除を受けるためには、確定申告書Bの「寄附金控除」欄に必要事項を記入する必要があります。
第一表と第二表の記入箇所
- 第一表:所得控除の記入
「所得から差し引かれる金額」欄の「寄附金控除」欄に、全寄附額から自己負担2,000円を差し引いた金額を記入します。 - 第二表:寄附先の明細の記入
「寄附金の種類」「寄附先自治体名」「寄附金額」「受領証明書の有無」を記載します。寄附件数が多い場合でも、すべての自治体の分を正確に記入することが必要です。
例
寄附金の種類:都道府県・市区町村への寄附金
寄附先:○○県○○市
金額:10,000円
証明書:あり
e-Taxを使った申請方法のポイント
個人事業主の多くは、電子申告(e-Tax)を活用して確定申告を行っているかと思います。e-Taxを使えば、紙の申告よりも以下のようなメリットがあります。
- 寄附金控除の証明書を電子データで添付可能(PDF形式対応)
- 最大65万円の青色申告特別控除を適用するには、e-Taxでの提出が必須
- 申告後の税金還付が早い(最短で2~3週間程度)
e-Taxを使用するには、「マイナンバーカード」と「ICカードリーダー」または「スマホのマイナポータルアプリ」などの準備が必要です。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」では、手順に従って入力すれば寄附金控除もスムーズに申請できるようになっています。
Tips:マイナポータル連携機能を使えば、対応自治体の寄附情報が自動で入力されることもあり、作業時間を大幅に短縮できます。
参考:個人事業主もふるさと納税をした方が良い?節税効果やデメリットを解説
青色申告でのふるさと納税の扱い

個人事業主として青色申告を選択している場合、65万円の特別控除や赤字の繰越など、多くの税制優遇を受けられるのが大きな魅力です。そんな青色申告を行う事業者がふるさと納税を活用する際には、いくつかの注意点があります。ここでは、「青色申告特別控除との関係」や「帳簿との整合性」といった重要な観点から解説します。
青色申告特別控除との関係は?
まず結論から言えば、ふるさと納税による「寄附金控除」と、青色申告特別控除はまったく別の制度であり、同時に利用することが可能です。
ふるさと納税で受けられるのは、所得税および住民税の控除(税額軽減)であり、これは確定申告書Bの「所得控除」欄に記載することで反映されます。一方で、青色申告特別控除は、事業所得を青色申告で申告することにより、最大65万円を事業所得から差し引く制度です。
両者は控除の性質も対象も異なるため、同じ年に併用することで節税効果を高めることができます。ただし、青色申告特別控除の65万円をフルで受けるには、e-Taxによる電子申告か電子帳簿保存が条件となっているため、ふるさと納税と合わせて申告する際も、この条件を満たすようにしましょう。
ポイント:e-Taxで寄附金控除を申告すれば、青色申告特別控除の65万円も同時に受けられる。紙提出だと控除額は最大55万円に減額されるため注意。
帳簿との整合性に注意
ふるさと納税は「個人的な寄附金」であり、事業用の支出とは区別する必要があります。したがって、ふるさと納税にかかる金額は帳簿上「経費」として処理することはできません。
帳簿付けにおいては、以下のような勘定科目を用いるのが一般的です。
- 借方:事業主貸
- 貸方:普通預金(またはクレジットカード)
このように処理することで、「事業ではなく個人の支出であること」を明確に区別できます。返礼品を受け取った場合でも、その品が事業に関係していても、ふるさと納税はあくまで“納税者個人の寄附”であるため、経費計上はできません。
また、青色申告では正確な帳簿作成が求められるため、ふるさと納税に関する記録や証明書類(寄附金受領証明書など)も、事業用とは別に整理して保管しておくことが重要です。帳簿にふるさと納税を記載しなければならないわけではありませんが、通帳からの引き落としやカード明細には記録が残るため、仕訳の処理は明確にしておきましょう。
注意:誤って事業経費として仕訳すると、税務署からの指摘やペナルティの対象になる可能性があります。個人支出は「事業主貸」で処理するのが鉄則です。
参考:個人事業主がふるさと納税を仕訳する際の勘定科目は?仕訳例や注意などを解説
よくある質問とトラブル対策

ふるさと納税は制度としてシンプルに見えますが、実際に利用してみると「控除が反映されない」「税務処理に誤りがあった」などのトラブルや疑問が生じることがあります。特に個人事業主の場合は、確定申告を自身で行うため、制度の理解不足によるミスが控除漏れにつながるリスクも。ここでは、よくある質問とその対策について詳しく解説します。
寄付をしたのに控除されなかった理由は?
もっとも多いトラブルの一つが、「ふるさと納税をしたのに控除がされていない」というものです。これは以下のような原因が考えられます。
- 確定申告書に寄附金控除の記載漏れがあった
確定申告書Bの第一表・第二表に正しく金額や寄附先を記入していないと、控除が反映されません。 - 寄附金受領証明書の添付忘れ/電子データ未提出
書類の不備や紛失が原因で、控除対象から外れるケースがあります。 - 自己負担額2,000円を差し引いた金額しか控除されないことを知らなかった
たとえば3万円寄附しても、控除されるのは28,000円。2,000円分は必ず自己負担となります。 - 上限額を超えて寄附していた
控除対象をオーバーした分は自己負担となるため、控除額が想定より少ないという結果になります。
申告書の内容と証明書類を二重チェックし、提出前にe-Taxや書面での確認を必ず行いましょう。
上限額を超えた場合の扱い
ふるさと納税の控除上限額を超えて寄附をした場合、その超過分は自己負担扱いとなります。たとえば、控除上限額が5万円の人が6万円を寄附した場合、1万円分は税金の控除対象にならず、そのまま寄附したことになります。
個人事業主は収入や経費の変動が大きく、上限額の見積もりが難しいこともあります。控除を見越して多めに寄附してしまうと、節税にならないばかりか、実質的な出費が増えることにもなりかねません。
補足
控除の上限は「住民税所得割額の2割」+所得税控除分が目安。ふるさと納税ポータルサイトのシミュレーションツールを活用しましょう。
対策
前年の確定申告書や売上見込みから計算し、余裕を持って控除額を設定するのがポイントです。
返礼品は課税対象になる?
ふるさと納税の魅力のひとつに「返礼品」がありますが、「これって課税対象にならないの?」と疑問に思う方も少なくありません。結論としては、通常の範囲内であれば返礼品に課税されることはありません。
ただし、以下のようなケースでは課税リスクが生じる可能性があります:
- 返礼品が事業用資産とみなされる場合
たとえば、事業で使うパソコンや高額な備品などを返礼品として受け取った場合、それを事業経費に含めてしまうと、税務調査で否認される恐れがあります。 - 明らかに高額・転売目的の返礼品
実態に合わない使い方をしていた場合、税務上の「利益」と見なされる可能性もゼロではありません。
対策:ふるさと納税はあくまで「個人の寄附」であるという前提を忘れず、事業との線引きを明確にしておくことが大切です。
参考:個人事業主こそふるさと納税をしよう!会社員よりお得な理由や控除額の計算方法
まとめ:ふるさと納税で賢く節税するために

ふるさと納税は、個人事業主にとって節税と地域貢献を同時に実現できる非常に優れた制度です。確定申告を行う個人事業主であれば、寄附金控除の申告をすることで、所得税の還付と住民税の軽減というダブルのメリットを受けることができます。
ただし、ふるさと納税を最大限活用するためには、控除上限額の確認、正しい寄附金の申告、証明書の保管、帳簿との整合性など、多くのポイントに注意が必要です。特に青色申告をしている場合は、電子申告の活用によって65万円の特別控除も併用でき、さらなる節税が可能になります。
制度を正しく理解し、確定申告をミスなく行うことで、ふるさと納税の恩恵をしっかり受けることができます。地域の特産品を楽しみながら、賢く税負担を軽減したい方にとって、ふるさと納税はまさに必須の制度といえるでしょう。