確定申告はいくらから必要?個人事業主や副業の場合をケース別に解説

確定申告とは?

確定申告とは?

副業をしている会社員やフリーランスとして働く個人事業主にとって、毎年気になるのが「確定申告はいくらから必要なのか?」という点です。とくに、収入が増えたタイミングや副業を始めた年など、「この金額なら確定申告は不要なのでは?」と疑問を持つ方も少なくありません。

この記事では、確定申告の基礎知識から、個人事業主や副業をしている方が確定申告をしなければならない金額の目安について、ケース別に詳しく解説していきます。

まずは、そもそも「確定申告とは何か?」を理解することが大切です。

確定申告の目的と仕組み

確定申告とは、1年間(1月1日〜12月31日)に得た所得を計算し、納めるべき税金を自ら申告・納税する手続きのことを指します。申告期間は、原則として翌年の2月16日〜3月15日までと定められており、この期間内に税務署へ申告書類を提出します。

日本の税制度は「申告納税制度」を採用しており、個人事業主や一定の副業収入がある給与所得者などは、自分自身で正しい税額を計算し、申告・納税を行う義務があります。

確定申告には、大きく分けて次の2つの目的があります。

  1. 税金の納付:所得に応じて正しい税額を計算し、税務署へ納税する。
  2. 税金の還付:源泉徴収などで税金を納めすぎていた場合に、払い戻しを受ける。

たとえば、個人事業主であれば、売上から必要経費を差し引いた「所得」に対して税金が課されるため、事業にかかった支出を正確に帳簿管理しておくことで、税額を抑えることが可能です。

また、副業で収入を得ている会社員の場合、勤務先では本業の給与に対してしか税金が計算されていないため、副業分の所得が年間20万円を超える場合には、確定申告による納税が必要です。

一方で、申告義務がない人であっても、医療費控除やふるさと納税などによって、払いすぎた税金が還付されるケースもあります。そのため、「確定申告=納税だけの手続き」ではなく、「お金が戻ってくるチャンス」でもあるのです。

所得税・住民税・消費税との関係

確定申告を語るうえで欠かせないのが、「どの税金に関係するのか」という点です。確定申告は、主に次の3つの税金に関わります。

1. 所得税

所得税は、個人が1年間に得た所得に対して課される国税です。確定申告書では、売上や報酬などの「収入」から「必要経費」や「所得控除」を差し引いて「課税所得」を算出し、それに対して税率をかけて税額を計算します。

課税所得が少なければ所得税も発生しないため、「確定申告はいくらから必要か?」という疑問は、主にこの所得税の基準から生まれるものです。

ちなみに、個人事業主の場合は、所得が48万円以下であれば、所得税は発生しません(基礎控除が48万円あるため)。これが「48万円以下なら確定申告不要」とされる根拠です。

2. 住民税

住民税は、前年の所得に応じて各市区町村に納める地方税です。住民税についても確定申告で申告された情報がもとになりますが、所得税とは異なるルールで課税されます。

たとえば、副業での所得が20万円以下であれば所得税の確定申告は不要とされていますが、住民税の申告は必要になるケースがあります。これを知らずに放置すると、後日市区町村から住民税の納付通知が届くこともあるため注意が必要です。

3. 消費税

消費税は、年間の売上が一定以上ある個人事業主に課される税金です。基準となるのは2年前の課税売上が1,000万円を超えたかどうかであり、対象者は消費税の申告と納税を行う必要があります。

ただし、開業間もない個人事業主や、副業で少額の売上しかない人は基本的に消費税の対象外であるため、「確定申告がいくらから必要か?」というテーマにおいては、所得税・住民税に比べて優先度は低めです。

参考:確定申告はいくらからが義務?事業所得者や給与所得者の所得税などを詳しく解説!

そもそも確定申告はいくらから必要?基本のルール

そもそも確定申告はいくらから必要?基本のルール

「個人事業主になったけど、収入が少ないから確定申告しなくてもいいのでは?」
「副業の収入が少額だけど、申告って必要?」

このような疑問を抱く人は多く、特に初めて確定申告をする方にとって「いくらから申告が必要なのか」は非常に重要なポイントです。

結論から言えば、確定申告が必要になるかどうかは「所得の金額」と「職業形態や収入源」によって異なります。ここでは、確定申告の必要性を判断するための基本ルールを、重要な3つの観点から解説します。

所得と収入の違いとは?

確定申告のルールを理解するうえでまず知っておきたいのが、「所得収入は違う」という点です。

  • 収入:売上や給料など、手元に入ってきた金額の総額
  • 所得:収入から必要経費や控除を差し引いた、実質的な利益

たとえば、フリーランスや個人事業主の場合、売上(収入)から経費を差し引いた金額が「事業所得」となります。仮に年間の売上が100万円あっても、経費が70万円かかっていれば、所得は30万円です。

このように、確定申告において「いくらから必要か?」を判断する際には、収入ではなく所得ベースで考える必要があります。

なお、給与所得者(会社員など)の場合は、源泉徴収票に記載された「給与所得控除後の金額」が所得に該当します。副業で得た報酬や事業収入も同様に、必要経費を引いた後の「所得」で判断されます。

所得48万円以下は申告不要?(基礎控除の考え方)

多くの個人事業主が「48万円以下なら確定申告は不要」と聞いたことがあるかもしれません。これは、所得税の計算において誰でも一律で適用される「基礎控除」が48万円あるためです。

つまり、以下のように計算されます:

課税所得 = 所得(収入−必要経費) − 各種控除(基礎控除含む)

この「課税所得」が0円以下になる場合、納める税金がなく、確定申告の義務は基本的に発生しません。

例:

  • 年間の売上が80万円
  • 経費が30万円
  • 所得は50万円
  • 基礎控除48万円を差し引くと課税所得は2万円
    →この場合は確定申告が必要となります。

一方で、所得が48万円以下であれば、基礎控除によって課税所得が0円になるため、原則として確定申告は不要となります。ただし、所得が少なくても住民税の申告が必要なケースや、税金の還付を受けるために申告した方が良いケースもあるため、後述する節で詳しく解説します。

特に開業初年度の個人事業主副業でまだ利益が少ない方は、自分の所得が48万円を超えているかをしっかり確認しましょう。

副業は20万円を超えると申告が必要?「20万円ルール」とは

副業をしている給与所得者(会社員・パート・アルバイトなど)にとって重要なのが、いわゆる「20万円ルール」です。

これは、以下のような基準によって、所得税の確定申告が必要かどうかを判断するルールです。

【20万円ルール】
給与所得があり、かつ、その年の給与以外の所得(副業など)が20万円以下であれば、所得税の確定申告は不要(※ただし住民税の申告は必要な場合あり)

つまり、本業の給与のほかに副業で得た所得が年間20万円を超えると、確定申告が義務になります

具体例1:副業がアルバイトの場合

  • 本業:会社員として年収400万円
  • 副業:飲食店のアルバイトで年収30万円
  • 所得区分:どちらも「給与所得」
  • 合計の給与所得は430万円になるため、2か所以上から給与を得ている場合のルールが適用されます。副業分に源泉徴収がされていない場合、確定申告が必要です。

具体例2:副業がフリーランスの場合

  • 本業:正社員として年収450万円
  • 副業:ブログの広告収入で年間報酬30万円、経費10万円
  • 所得:広告収入(30万円)− 経費(10万円)=20万円
  • 所得が20万円ジャスト → 基本的には確定申告が必要

このように、「収入」ではなく「所得」で20万円を超えるかどうかを判断基準にするのがポイントです。副業の経費をしっかり差し引いて、所得がいくらになるのかを事前に把握しておきましょう。

また、先ほども触れたとおり、所得税の申告が不要でも「住民税の申告は必要になる」ことがあるため、確定申告を完全にスルーするのはリスクが高いです。副業がある方は、最低限、住民税についても確認しておきましょう。

参考:確定申告しなくていい金額は?個人事業主や会社員などケース別に解説

【ケース別】確定申告が必要な所得の目安

【ケース別】確定申告が必要な所得の目安

確定申告が必要になるかどうかは、職業の形態や所得の種類によって異なります。一律に「年収〇〇円以上なら申告が必要」とは言えず、ケースごとに判断する必要があります。

ここでは、個人事業主・フリーランス、給与所得者(副業あり)、年金受給者、不動産所得や株式譲渡がある場合など、代表的なケースに分けて、確定申告が必要となる目安をわかりやすく解説します。

個人事業主・フリーランスの場合

年間所得が48万円を超えたら申告が必要

個人事業主やフリーランスとして働いている場合、年間所得が48万円を超えると確定申告が必要になります。この48万円という基準は、前述した通り「基礎控除」の金額と一致します。

たとえば、以下のような計算になります。

  • 年間売上:100万円
  • 必要経費:50万円
  • 所得(売上 − 経費):50万円
  • 所得 − 基礎控除(48万円)= 2万円(課税所得)

このように課税所得が1円でも発生すれば、所得税の確定申告義務が生じます。

なお、所得が48万円以下であっても、以下のようなケースでは申告を「しておいた方が良い」ことがあります。

  • 医療費控除やふるさと納税を活用したい場合
  • 源泉徴収されている報酬がある場合(還付の可能性)
  • 赤字を翌年以降に繰り越したい場合(青色申告者のみ)

青色申告をするなら事前申請が必要

個人事業主が確定申告を行う場合、「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。青色申告を選ぶと、以下のような節税メリットを受けられます。

  • 最大65万円の青色申告特別控除
  • 赤字の3年間繰越が可能
  • 家族への給与を経費にできる(専従者給与)

ただし、青色申告をするためには、開業届と「青色申告承認申請書」を税務署に提出しておく必要があります。申請期限は、原則として開業から2か月以内、または青色申告を適用したい年の3月15日までです。

節税を意識するなら、早めに青色申告の準備を進めることが大切です。

給与所得者で副業している場合

給与所得者(会社員・パート・アルバイトなど)が副業をしている場合、所得の種類によって確定申告の要否が変わってきます。

副業が報酬(雑所得)の場合

クラウドソーシング、ブログの広告収入、YouTube収益など、報酬や原稿料として受け取った副業収入は「雑所得」または「事業所得」として扱われます。

この場合、必要経費を差し引いた所得が年間20万円を超えると、確定申告が必要です。

例:

  • 副業報酬:30万円
  • 経費:5万円
  • 所得:25万円 → 確定申告が必要

また、20万円以下で確定申告が不要であっても、住民税の申告は必要になる場合が多いため注意しましょう。

副業が給与(アルバイト)の場合

副業がアルバイトやパートで、勤務先から給与として支払われている場合、「給与所得」として取り扱われます。

この場合の注意点は以下の通りです:

  • 副業先の給与に源泉徴収がない場合 → 確定申告が必要
  • 2か所以上から給与を受けており、副業の給与が年間20万円を超える場合 → 確定申告が必要
  • 副業の給与が20万円以下でも、住民税の申告が必要なケースが多い

副業が給与所得となる場合は、「2か所給与」の扱いになるため、想定以上に申告の手間が増えることもあります。特に、年末調整が副業先ではされていないケースが多いため、確定申告を通じて過不足を清算する必要があります。

参考:アルバイトをする個人事業主の確定申告は必要?いくらから?書き方やり方も解説

公的年金を受給している場合

公的年金を受給している場合

年金収入を得ている高齢者の場合でも、一定金額を超えると確定申告が必要になります。

年間の年金収入が400万円超は申告が必要

原則として、公的年金等の収入が年間400万円を超える場合には、確定申告が必要です。また、400万円以下であっても、以下のようなケースでは申告が求められることがあります。

  • 年金以外に所得がある(不動産収入・株の利益など)
  • 複数の年金機関から収入を得ていて、源泉徴収が不十分な場合
  • 医療費控除や社会保険料控除などの還付を受けたい場合

年金受給者であっても、確定申告によって還付が受けられることがあるため、「いくらから確定申告が必要か?」という視点と合わせて、還付の可能性にも注目しましょう。

不動産所得・株式譲渡などその他のケース

不動産所得や株式売却など、給与・事業以外の収入がある場合にも、条件次第で確定申告が必要です。

不動産所得の場合

賃貸収入などがある場合、収入 − 必要経費 = 所得が48万円を超えると、確定申告が必要です。管理費・修繕費・減価償却費などの経費を適切に差し引いて計算します。

株式譲渡・配当の場合

株式の譲渡益や配当金がある場合、「特定口座(源泉徴収あり)」を利用していれば、基本的に申告不要ですが、以下のようなケースでは確定申告が必要です。

  • 特定口座(源泉徴収なし)を利用している
  • 損益通算や繰越控除を活用したい
  • 配当控除を受けたい

株式や投資信託を複数保有している場合、税務上の有利・不利を見極めるためにも確定申告が推奨されることがあります

参考:会社員の副業はいくらから確定申告すべき?「20万円ルール」とは?

確定申告が不要な場合でも申告したほうがよいケース

確定申告が不要な場合でも申告したほうがよいケース

確定申告は、「一定の所得を超えた人に義務がある」というイメージがありますが、実は申告の義務がない人でも、申告することで得をするケースが多々あります

このような申告は「還付申告」や「節税目的の申告」と呼ばれ、税金が戻ってきたり、翌年以降の税負担を軽くしたりする効果が期待できます。

ここでは、特に見落としがちな2つの代表例をご紹介します。

還付申告で税金が戻ってくる可能性がある

まず注目したいのが「還付申告」です。これは、すでに源泉徴収などで納めた税金が多すぎた場合に、申告を通じて払い戻しを受ける手続きです。

たとえば、以下のようなケースでは確定申告をすることで税金が戻ってくる可能性があります。

  • 個人事業主やフリーランスとして報酬を受け取る際に、源泉徴収されていた
  • 副業で得た原稿料や講演料に対して10.21%の源泉徴収がされていた
  • 年の途中で退職したが、年末調整を受けていない
  • アルバイトやパートで収入が少なかったが、所得税が引かれていた

これらのケースでは、実際の所得額に比べて多くの税金が天引きされているため、確定申告をすればその差額が戻ってくる可能性が高いのです。

還付申告は、確定申告の義務がない人でも行うことができ、対象年の翌年1月1日から5年間は手続きが可能です。「少額だから」とあきらめず、一度シミュレーションしてみるのがおすすめです。

医療費控除やふるさと納税などで節税できる

もう一つの大きなメリットは、各種控除を活用して節税ができるという点です。たとえ課税対象となる所得が少なかったとしても、以下のような控除制度を活用することで、所得税や住民税の負担を軽減できます。

医療費控除

年間の医療費が10万円(もしくは所得の5%)以上かかった場合、その金額の一部を所得から控除できます。高額な治療費や、家族の医療費を負担した場合など、医療費が一定額を超える場合は申告をすると還付の可能性が高まります

ふるさと納税(寄附金控除)

「ふるさと納税」をした人も、確定申告を行うことで寄附金控除が適用され、実質2,000円の自己負担で自治体から返礼品がもらえる仕組みです。給与所得者でワンストップ特例制度を利用しない場合、副業や事業所得のある個人事業主などは確定申告が必要です。

そのほかにも以下のような控除制度があります。

  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 社会保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除

これらを申告することで、納めすぎた税金を取り戻せたり、翌年の住民税が軽減されたりする可能性があるため、「確定申告は義務ではないからしなくていい」と決めつけず、節税の観点から申告を検討することが重要です

参考:確定申告は個人事業主の場合年収いくらから? ケース別の要不要や手順

確定申告をしなかった場合のリスクとペナルティ

確定申告をしなかった場合のリスクとペナルティ

「今年はあまり稼げなかったから、確定申告しなくてもいいかな」
「うっかり提出期限を過ぎてしまった…」

そんな軽い気持ちで確定申告を怠ってしまうと、思わぬペナルティや信用リスクを被る可能性があります。個人事業主や副業をしている方にとって、確定申告は単なる税金の計算作業ではなく、事業運営の信用や今後の資金調達にも直結する重要な手続きです。

ここでは、確定申告をしなかった場合に生じる主なリスクを2つに分けて解説します。

無申告加算税・延滞税のリスク

確定申告が義務であるにもかかわらず申告をしなかった場合、「無申告加算税」や「延滞税」といった罰則的な税金が課されます。

無申告加算税とは?

無申告加算税は、本来の納税額に加えて課されるペナルティ税です。以下のようなルールがあります。

  • 自主的に申告した場合:加算税はかからない(期限後申告扱い)
  • 税務署から指摘された後の申告
    納付すべき税額の50万円まで → 15%加算
    50万円を超える部分 → 20%加算

例えば、本来の所得税が10万円だった場合、最大で15,000円の無申告加算税が別途かかることになります。

延滞税とは?

延滞税は、納付期限を過ぎた税金に対して日割りで発生する利息のような税金です。延滞日数に応じて利率が定められており、数ヶ月の遅れでも数千円〜数万円の延滞税が課される可能性があります。

特に、個人事業主で青色申告の届出をしている方が無申告になると、翌年以降の青色申告特別控除の適用を失う可能性もあり、節税面でも大きな損失になります。

「バレなければ大丈夫」と思うのは危険で、取引先が提出する支払調書や銀行口座の入出金情報などから税務署に把握されているケースも多いため、申告漏れは非常にリスクが高いのです。

事業資金の調達や信用面での不利

確定申告をしていない、または申告内容が曖昧な場合、個人事業主としての信用力の低下にもつながります。

融資・ローンが通らない可能性

事業資金の融資を受けたり、住宅ローン・マイカーローンなどの審査を通す際、金融機関は確定申告書の控えや納税証明書を重視します。これらは収入や所得を客観的に証明する唯一の公的書類だからです。

確定申告をしていない=収入が不明瞭=信用できない、という評価を受けるリスクがあるため、たとえ所得が少額でも正しく確定申告を行っておくことが事業継続のためにも重要です。

賃貸契約・補助金申請でも影響

また、住居の賃貸契約や事業用の補助金・助成金の申請でも、確定申告書が提出書類として求められることが一般的です。申告をしていないと、「そもそも収入の根拠が示せない=申請できない」という事態になりかねません。

特に、コロナ禍以降は補助金や給付金の申請機会も増えましたが、いずれも過去の申告状況が審査基準になることが多く、申告の有無が受給の可否を左右する例も多数見られました

参考:確定申告しなくていい金額はいくらまで?しなくていい条件などを解説

確定申告のやり方と必要書類

確定申告のやり方と必要書類

確定申告が必要だとわかっても、「どうやって進めればいいのかわからない」「必要書類が多くて難しそう」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。特に初めての確定申告では、申告の流れや必要書類を正しく理解しておくことが大切です。

このセクションでは、個人事業主と給与所得者(副業者)に分けて申告方法を解説し、さらに近年主流になりつつあるオンライン申告(e-Tax)の使い方についても紹介します。

個人事業主の場合の手順と必要書類

個人事業主の確定申告では、1月1日から12月31日までの「事業活動の収入と支出を正確に集計すること」が基本です。以下は、青色申告・白色申告のどちらにも共通する基本的な手順です。

① 帳簿の作成(記帳)

日々の売上や経費、仕入れ、報酬などの取引を帳簿に記録します。青色申告の場合は複式簿記による記帳が求められますが、会計ソフト(freee・マネーフォワードなど)を使えば初心者でも対応可能です。

② 必要書類の準備

以下の書類を準備します。

  • 確定申告書B(所得税用)
  • 青色申告決算書(または白色の場合は収支内訳書)
  • 源泉徴収票(報酬支払者から交付された場合)
  • 各種控除証明書(国民年金、生命保険、地震保険など)
  • 医療費の領収書(医療費控除を申請する場合)

③ 申告書の作成

記帳内容をもとに、各種控除や所得金額を記載した「確定申告書B」と「青色申告決算書(または収支内訳書)」を作成します。

④ 税務署へ提出 or e-Taxで送信

申告書類を作成したら、税務署に提出します。提出方法は以下の3つから選べます。

  • 税務署に直接持参
  • 郵送で提出
  • e-Taxを使ってオンライン申告

給与所得者や副業者の申告方法

副業などで給与以外の所得がある会社員やアルバイトの方も、条件によっては確定申告が必要です。申告方法は比較的シンプルで、以下のステップで進めます。

① 副業所得の確認と分類

副業の種類(アルバイト・フリーランス・投資など)に応じて、「給与所得」「雑所得」「事業所得」などに分類します。副業が報酬型の場合は経費計上も忘れずに行いましょう。

② 必要書類の準備

副業の形態によって必要な書類が異なります。

  • アルバイト:副業先の源泉徴収票
  • フリーランス:報酬の支払調書、経費の領収書など
  • 投資:年間取引報告書(証券会社発行)
  • 医療費控除:医療費通知書または領収書一覧
  • ふるさと納税:寄付受領証明書

加えて、会社から交付される本業の源泉徴収票も必須です。

③ 申告書類の作成

給与所得者が副業を含めた確定申告を行う場合は、「確定申告書A」を使用します。ただし、事業所得がある場合は「申告書B」を用います。

会計ソフトや国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使えば、自動計算で簡単に作成できます。

④ 提出と納税

完成した申告書を税務署に提出し、不足分の税金がある場合は3月15日までに納税を行います。還付がある場合は、提出後数週間〜1ヶ月程度で指定口座に入金されます。

e-Taxを活用してオンライン申告する方法

e-Tax(イータックス)は、国税庁が提供するインターネットを通じて確定申告ができるシステムです。紙の申告書を使わず、PCやスマホから手軽に申告できるため、多くの個人事業主・副業者に利用されています。

e-Taxのメリット

  • 税務署へ行く必要がない
  • 24時間いつでも申告可能
  • 還付が早い(最短2週間)
  • 添付書類の一部を省略可能
  • 青色申告特別控除65万円が適用される条件の一つ

利用の流れ

  1. マイナンバーカードを用意
    e-Taxで申告するには、マイナンバーカードと対応するスマホまたはカードリーダーが必要です。
  2. 利用者識別番号を取得
    e-Tax初回利用時に、国税庁のサイトから「利用者識別番号」を取得します。
  3. 「確定申告書等作成コーナー」へアクセス
    国税庁の公式サイトで、収入・控除・納税情報を入力します。会計ソフトからデータ連携も可能です。
  4. 電子申告を送信
    入力内容を確認し、マイナンバーカードで電子署名を行って送信すれば申告完了です。
  5. 納税もオンラインで可能
    クレジットカード納付やインターネットバンキング、QRコードを使ったコンビニ納付などに対応しています。

参考:確定申告は収入がいくらから必要になる?フリーランスや副業などパターン別に解説

確定申告を簡単に済ませるためのおすすめツール

確定申告を簡単に済ませるためのおすすめツール

「帳簿付けが面倒…」「どこまで経費にできるのか分からない…」
そんな不安や手間を解消してくれるのが、クラウド会計ソフトの存在です。特に、freee会計マネーフォワード クラウド確定申告といった人気ツールは、確定申告を簡単に・正確に終わらせたい個人事業主や副業者にとって心強い味方になります。

このセクションでは、確定申告を効率化するおすすめツールと、それらを使って青色申告特別控除を最大限に活かすための準備について解説します。

会計ソフト(freee・マネーフォワードなど)の活用

近年、多くの個人事業主やフリーランスが導入しているのが、クラウド型会計ソフトです。代表的なものとしては、以下の2社が非常に人気です。

freee会計の特徴

  • 初心者でも直感的に使えるUI
  • 銀行口座・クレジットカード・レジアプリなどと連携して自動仕訳
  • 青色申告決算書・確定申告書類を自動作成
  • スマホアプリからレシート撮影→経費登録も可能
  • 電子申告(e-Tax)にも完全対応

特にfreee会計は「確定申告が初めて」という人に向いており、画面に沿って質問に答えていくだけで書類が完成するため、簿記の知識がなくても安心です。

マネーフォワード クラウド確定申告の特徴

  • 複式簿記ベースのしっかりした帳簿管理が可能
  • レポート機能が充実しており、経営状況の可視化が得意
  • AIによる自動仕訳で入力の手間を削減
  • 電子申告にも対応

マネーフォワードは、ある程度会計知識がある人や、事業規模が大きくなってきた人におすすめです。

どちらのツールも、確定申告の時期には利用者が急増するため、早めに登録・設定しておくと安心です。多くの機能が無料プランまたはお試し期間で体験できるので、ぜひ自分のスタイルに合ったものを選びましょう。

青色申告特別控除を最大限活かすための準備

確定申告における最大の節税メリットの一つが、「青色申告特別控除(最大65万円)」です。この控除を受けるためには、いくつかの要件を満たす必要があります。

青色申告特別控除を受けるための主な要件:

  1. 青色申告承認申請書を期限内に提出していること
    → 開業から2か月以内、もしくは青色申告を希望する年の3月15日までに提出が必要です。
  2. 複式簿記による帳簿付けを行っていること
    → 会計ソフトを使えば自動で複式簿記の帳簿が作成可能。
  3. 正規の帳簿とともに確定申告書を期限内に提出していること
    → 提出期限を1日でも過ぎると控除額が10万円に減額されてしまうため要注意。
  4. e-Taxで電子申告するか、電子帳簿保存を実施していること(65万円控除の条件)
    → 会計ソフトを通じてe-Tax申告を行えばこの条件は自動でクリア。

つまり、クラウド会計ソフトを活用すれば、これらの条件の多くを自然に満たすことができるため、最大限の控除を受けやすくなります。

さらに、青色申告では「赤字の繰越」や「専従者給与の必要経費算入」といった制度も活用できるため、事業所得のある個人事業主にとっては非常に重要な制度となっています。

参考:フリーランスの確定申告はいくらから必要?条件や申告時の注意点を解説

個人事業主の確定申告に関するよくある質問

個人事業主の確定申告に関するよくある質問

確定申告は収入がなくても必要?

原則として、所得がない場合は確定申告の義務はありません。ただし、個人事業主の場合は「開業届を出したから毎年必ず申告しないといけない」と誤解している人も多いですが、実際には所得(収入-経費)が48万円以下であれば申告義務はありません

ただし、以下のようなケースでは申告した方がメリットがあります。

  • 源泉徴収されていた報酬がある(還付の可能性あり)
  • 医療費控除やふるさと納税の申請をしたい
  • 赤字を繰り越して翌年以降に控除したい(青色申告の場合)

義務はなくても、申告することで得られるメリットがあるかどうかで判断しましょう。

所得が48万円以下なのに通知が来たのはなぜ?

「所得が少ないのに、税務署から確定申告の案内が来た」というケースは珍しくありません。これは、前年の収入や過去の申告状況、支払調書の情報などをもとに、自動的に案内が送られていることが多いためです。

また、住民税の申告が必要なケースや、支払調書から税務署が収入の存在を把握している場合にも、確認の意味で通知が届くことがあります。

通知が届いたからといって必ずしも申告義務があるとは限りませんが、自身の所得状況を正確に把握して判断することが大切です。不安があれば、税務署や税理士に相談しましょう。

副業が赤字でも確定申告は必要?

副業が赤字であっても、申告をすることで得られるメリットがある場合があります

たとえば、副業の所得が「事業所得」と認められる場合、本業の給与所得と損益通算が可能になり、所得税の還付が受けられるケースがあります。また、青色申告をしていれば、赤字を3年間繰り越して翌年以降の利益と相殺することもできます。

一方、副業が「雑所得」として扱われる場合、損益通算や赤字の繰越は認められません。副業の内容が事業所得として認められるかどうかは、継続性・独立性・営利性などが判断基準になります。

参考:副業で赤字になったら節税になる?税金還付の対象になるかを解説

確定申告がいくらから必要かに関するまとめ

確定申告がいくらから必要かに関するまとめ

ケース別に必要かどうか判断して正しく申告しよう

確定申告が必要となる基準は、「いくらから収入があるか」だけでなく、「その収入がどのような所得に分類されるか」「副業か本業か」によっても変わってきます。

個人事業主の場合は、所得が48万円を超えると確定申告が必要になりますし、給与所得者であっても副業の所得が20万円を超えると申告義務が発生します。

また、義務がなくても還付申告や控除の活用により、税金が戻ってくる可能性があるため、損をしないためにも確定申告を前向きに活用することをおすすめします。

自分がどのケースに該当するかを把握し、会計ソフトやe-Taxなどのツールを上手に使って、正しく、そして効率的に確定申告を済ませましょう。