確定申告書の書き方とは?書類ごと・項目ごとにやさしく解説

確定申告書は、個人事業主が所得や経費を税務署に申告するための大切な書類ですが、「どこに何を書けばいいの?」「ミスをしたらどうなる?」と不安を感じる方も多いはず。書類の種類や項目ごとの意味を理解すれば、初めてでも落ち着いて対応できます。本記事では、確定申告書の基本的な構成から、書き方のポイント、間違えやすい項目までをやさしく丁寧に解説します。

確定申告書の種類と選び方

確定申告書の種類と選び方

確定申告書の種類は主に4つ

確定申告とは、1年間の所得を計算し、税務署に申告・納税する手続きです。個人事業主の場合、自分で申告書類を作成して提出する必要があります。この確定申告書は主に4種類に分かれており、それぞれ提出する状況が異なります。具体的には以下の通りです。

  • 確定申告書 第一表・第二表(基本書類)
    基本的にすべての方が提出する必要のある書類です。収入・所得・控除の内訳を記載します。
  • 確定申告書 第三表(分離課税用)
    土地・建物・株式の譲渡など、特定の分離課税所得がある場合に追加で提出します。
  • 確定申告書 第四表(損失申告用)
    事業所得や不動産所得で赤字(損失)が発生し、損失を繰り越す場合に必要な書類です。主に青色申告を行う個人事業主が利用します。

これらの書類を適切に選び記入することが、正確な確定申告を行うためには欠かせません。

個人事業主はどの申告書を選べばいい?

個人事業主として確定申告を行う際、主に利用するのは「確定申告書 第一表・第二表」です。ここには事業で得た収入や経費、控除項目、税額計算など基本的な情報を記載します。

さらに、個人事業主が青色申告を選択した場合、青色申告特別控除(最大65万円)を受けることができます。この控除を受けるためには「所得税青色申告決算書」を提出する必要があります。白色申告の場合は「収支内訳書」を作成して提出します。

個人事業主が選ぶ申告書を整理すると以下のようになります。

青色申告を行う場合

  • 確定申告書 第一表・第二表
  • 所得税青色申告決算書

白色申告を行う場合

  • 確定申告書 第一表・第二表
  • 収支内訳書

また、株式取引や不動産譲渡で利益を得た場合は、別途「確定申告書 第三表」を用意します。損失がある場合で、翌年以降への繰り越しを希望する青色申告者は「確定申告書 第四表」も必要です。

個人事業主が確定申告の書類を正しく選択するポイントは以下の通りです。

収入・所得の種類を明確にすること

事業所得以外に株式投資や不動産取引があれば、第三表の追加が必要になります。

青色申告か白色申告かを決定すること

青色申告は節税メリットがありますが、記帳義務が厳格です。記帳や会計に自信がない場合は、まずは白色申告から始めてもよいでしょう。

前年に赤字が出ている場合

青色申告者なら第四表を用いて赤字を繰り越せるため、提出を忘れないようにしましょう。

個人事業主にとって、確定申告は煩雑な作業ですが、自分の状況に応じて必要な書類をしっかり選択し、丁寧に記入することが大切です。初めて確定申告を行う個人事業主の場合、国税庁のウェブサイトや確定申告用ソフトを活用すると記入方法が分かりやすくなります。わからないことがあれば税務署への相談もおすすめです。適切な書類を準備し、スムーズな確定申告を行いましょう。

参考:確定申告の書き方をわかりやすく解説!【ケース別の記入例つき】

確定申告書を書く前に必要な準備

確定申告書を書く前に必要な準備

個人事業主が確定申告をスムーズに行うためには、申告書を作成する前の準備が非常に重要です。準備不足だと必要な情報が揃わず、申告期限に間に合わなくなることもあるため、早めの準備を心がけましょう。

確定申告を正確かつ効率的に進めるには、事前に必要な書類を整理し、源泉徴収票の内容もしっかり理解しておくことがポイントです。次の項目で具体的に解説していきます。

確定申告に必要な書類チェックリスト

確定申告書を書く前に、まずは以下の書類を手元に準備しましょう。チェックリストとして活用してください。

確定申告書類(基本セット)

  • 確定申告書 第一表・第二表(必須)
  • 所得税青色申告決算書(青色申告の場合)
  • 収支内訳書(白色申告の場合)

所得・収入を証明する書類

  • 源泉徴収票(給与所得者や副業収入がある場合)
  • 支払調書(業務委託報酬や配当所得などがある場合)
  • 売上のわかる帳簿や請求書(個人事業主の場合)

各種控除を受けるための証明書類

  • 社会保険料控除証明書(年金や健康保険料など)
  • 生命保険料控除証明書
  • 地震保険料控除証明書
  • 医療費控除の明細書・領収書
  • 寄附金控除(ふるさと納税)の証明書
  • 住宅ローン控除に関する書類(年末残高等証明書など)

本人確認書類

  • マイナンバーカードまたは通知カードと身分証明書(運転免許証など)

還付を受ける場合

  • 還付金の振込先口座情報(通帳など)

書類を事前に整理しておけば、申告時にスムーズに入力・記載ができます。特に控除関係の証明書は再発行に時間がかかる場合があるため、余裕をもって準備しておきましょう。

源泉徴収票の見方とポイント

源泉徴収票の見方とポイント

確定申告書を書く際に、給与所得がある個人事業主や副業収入を得ている人にとって必須なのが「源泉徴収票」です。源泉徴収票には給与所得の額や控除額、源泉徴収された所得税額が記載されています。申告書に転記する際の見方と注意点を解説します。

① 支払金額(給与等の額)

1年間に支払われた給与の総額が記載されています。この金額を確定申告書の「収入金額等」欄に転記します。

② 給与所得控除後の金額

「支払金額」から給与所得控除額を差し引いた金額です。申告書の「所得金額」欄に記入します。

③ 所得控除の額の合計額

配偶者控除や生命保険料控除、社会保険料控除など所得控除の合計額が記載されています。これは申告書の「所得から差し引かれる金額」に記載します。

④ 源泉徴収税額

年間で給与から源泉徴収された所得税額を指します。申告書の「税金の計算」欄に記入し、実際の所得税額との過不足を精算します。

⑤ 控除対象扶養親族の数

所得控除を計算する際に重要な項目であり、申告書の扶養控除欄に記載します。

⑥ 社会保険料等の金額

年間で天引きされた健康保険料や年金保険料が記載されています。社会保険料控除として申告書に記入します。

源泉徴収票を見るときのポイントは、「支払金額」「所得控除額」「源泉徴収税額」を特に注意深く確認することです。これらの数字を正しく申告書に転記しないと、後々修正申告が必要になる場合があります。記入ミスや漏れを防ぐため、源泉徴収票の内容をよく確認し、必要に応じて給与支払い者に問い合わせるようにしましょう。

個人事業主が副業で給与を受け取っている場合にも、源泉徴収票は重要な書類です。これらの書類を確実に用意し、確定申告に備えましょう。

参考:【2025年最新】令和6年分確定申告書の見方と書き方を項目別にわかりやすく解説

確定申告書 第一表の書き方(項目別解説)

確定申告書 第一表の書き方(項目別解説)

確定申告書 第一表は、個人事業主が確定申告を行う際に必ず記入する重要な書類です。ここでは、第一表に記入する各項目をわかりやすく、順番に解説していきます。

住所や氏名など個人情報の記入方法

まず、確定申告書 第一表の最上部には、自分の基本情報を記入します。以下の項目を記入してください。

  • 住所・電話番号
    住民票に登録されている住所を正確に記入します。電話番号は、税務署から問い合わせがあった場合に使用されるため、日中に連絡がつきやすい番号を書きましょう。
  • 氏名・フリガナ
    氏名は正確に記入し、フリガナも忘れずに書き入れます。印鑑は不要です。
  • 個人番号(マイナンバー)
    マイナンバーカードまたは通知カードに記載の個人番号を正確に記入しましょう。
  • 職業・屋号
    職業欄には「個人事業主」または「フリーランス」などと記入し、屋号を使用している場合は併記します。

収入金額等の記入方法

次に、確定申告書 第一表の「収入金額等」の欄には、その年に得た収入の合計額を記入します。

  • 事業収入
    個人事業主として得た売上や報酬の総額を記載します。消費税込みでの売上がある場合は、税込金額を記入します。
  • 給与所得
    源泉徴収票に記載された「支払金額」をそのまま転記します。
  • 雑所得・その他の所得
    アフィリエイトや講演料など事業所得以外の所得があれば、合算して記入します。

収入ごとに分けて整理しておくと、間違いなく記入できます。

所得金額等の記入方法

「所得金額等」の欄には、収入から必要経費を差し引いた金額(所得)を記入します。

  • 事業所得
    青色申告決算書や収支内訳書で算出した所得額を転記します。
  • 給与所得
    源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」をそのまま記入します。
  • 雑所得・その他所得
    収入から経費を引いた残額を記入します。

事業所得の経費計算が複雑な場合は、会計ソフトを活用すると簡単に所得金額を算出できます。

所得控除額の記入方法

所得控除額の記入方法

所得控除額とは、所得から差し引いて税金を計算するための控除のことです。控除額を正しく記入することで、節税につながります。主な控除項目は以下の通りです。

社会保険料控除

年金や健康保険料を記入します。給与天引き以外に自分で払った分も含めます。

生命保険料控除・地震保険料控除

控除証明書に記載された控除額を転記します。

配偶者控除・扶養控除

控除対象となる配偶者や扶養家族の人数を記入し、該当する控除額を記載します。

基礎控除

一律48万円の控除を受けられますので、必ず記入します。

控除漏れがないよう、控除証明書や源泉徴収票をよく確認しましょう。

税金の計算欄の書き方

税金の計算欄は、所得から控除を差し引いた金額(課税所得)をもとに税額を計算します。具体的には次の通りです。

  • 課税される所得金額
    「所得金額」から「所得控除額」を引いた金額を記入します。
  • 所得税額の計算
    国税庁が公表する所得税の速算表を利用し、課税所得から算出した税額を記載します。
  • 復興特別所得税
    所得税額に2.1%をかけて算出し、記載します。
  • 源泉徴収税額の記入
    源泉徴収票に記載されている源泉徴収税額を転記し、実際に支払うべき所得税との差額を計算します。

計算が難しい場合は、税務署の相談窓口や確定申告ソフトを活用するのがおすすめです。

その他(延納の届出・還付口座の記載など)

第一表の下部には、延納の届出や還付金の受取方法について記載する箇所があります。

  • 延納の届出
    納税額が高額で一括納付が難しい場合、延納制度を利用できます。延納を希望する場合は、延納希望欄にチェックを入れ、延納金額を記入します。
  • 還付金受取口座
    税金の還付が発生した場合に振り込まれる銀行口座を記載します。口座情報は正確に記入しましょう。

特に還付金の口座情報は間違えると入金されないため、慎重に確認して記入しましょう。

以上のポイントを押さえ、各項目を正しく記入することで、個人事業主の確定申告書作成がスムーズに進められます。

参考:青色申告に必要な書類の書き方は?個人事業主・フリーランス向けに解説

確定申告書 第二表の書き方(項目別解説)

確定申告書 第二表の書き方(項目別解説)

確定申告書 第二表は、個人事業主が所得の詳細や控除の内訳、家族に関する情報などを記載するための書類です。第一表に記載した情報の根拠となる内容が盛り込まれており、税務署が正しく課税・還付処理を行うための大事な資料となります。ここでは、各項目をわかりやすく解説していきます。

本人に関する事項(住所・屋号・氏名等)

第二表の上部には、第一表と同様に申告者本人の情報を記載する欄があります。

  • 住所・氏名
    第一表と同じく、現住所と氏名を正確に記入します。郵便番号も忘れずに。
  • 屋号
    個人事業を営んでいる場合には、屋号(事業の名称)を記載します。屋号がない場合は空欄で構いません。
  • 生年月日
    年齢によって適用できる控除が異なる場合があるため、正確な生年月日を記載することが必要です。

この項目は税務署が申告者の身元を確認するために使う情報なので、間違いがないよう注意しましょう。

所得の内訳の記入方法

次に記入するのは、「所得の内訳」の欄です。これは第一表に記載した所得の出所や内訳を詳細に説明するための欄で、主に以下の内容を記載します。

  • 事業所得の内訳
    得意先名(取引先)や所在地、支払金額を記載します。複数の取引先がある場合はすべて列記し、合計金額が第一表の「収入金額等」と一致するように記載します。
  • 給与所得の内訳
    給与を受け取っている会社名や支払金額、源泉徴収税額などを記入します。源泉徴収票の内容と一致させましょう。
  • 雑所得などがある場合
    講演料やアフィリエイトなどの副収入もここに記載します。支払者の情報と支払金額を明記しましょう。

この欄の情報は税務署が照合に使うため、収入の出所を正しく書くことが求められます。

保険料控除等に関する事項

この項目では、各種保険料控除や社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除などの詳細を記載します。

  • 社会保険料控除
    国民年金、健康保険など、自分で支払った保険料の金額を記入します。給与から天引きされている場合でも、証明書があれば記入できます。
  • 生命保険料控除
    保険会社から届く「生命保険料控除証明書」に記載された金額を転記します。一般・介護医療・個人年金の3区分があります。
  • 地震保険料控除
    地震保険料控除証明書に記載された金額を記入します。
  • 小規模企業共済等掛金控除
    共済やiDeCo(個人型確定拠出年金)を利用している場合、支払った金額を記載します。こちらも証明書が必要です。

各控除額はすでに第一表に合計として記入済みのため、ここでは詳細な内訳を記入することになります。

配偶者・親族・事業専従者に関する事項

この欄では、扶養控除や配偶者控除、事業専従者給与を受け取っている家族について記載します。主に次のような情報を記入します。

  • 配偶者に関する事項
    配偶者の氏名・生年月日・所得金額・控除の区分などを記載します。専業主婦(夫)などで一定の条件を満たせば、配偶者控除や配偶者特別控除が適用されます。
  • 扶養親族に関する事項
    扶養している子どもや親などの氏名・続柄・生年月日・所得状況を記入します。年齢や学生かどうかによって控除額が変わるため、正確に書きましょう。
  • 事業専従者に関する事項
    個人事業に従事している家族(事業専従者)がいる場合は、その氏名・続柄・給与の支給額を記入します。青色申告では「青色事業専従者給与」、白色申告では「専従者控除」として処理されます。

この項目に間違いがあると、適用できる控除額が変わってしまうため、よく確認して記載することが大切です。

住民税・事業税に関する事項

最後に記入するのが、住民税・事業税に関する事項です。この情報は各市区町村へ送られ、住民税や個人事業税の計算に使われます。

  • 住民税の申告方法
    自分で申告するか、特別徴収(給与からの天引き)を希望するかを選択します。個人事業主は「自分で納付」を選ぶのが一般的です。
  • 事業専従者の有無や事業内容の記載
    専従者がいる場合や複数の事業を営んでいる場合は、その内容を詳しく記載する必要があります。
  • 前年中の退職の有無
    給与所得があった場合、いつ退職したかなども記載欄があります。誤記載すると住民税の額にズレが出る可能性があります。

住民税は翌年6月から支払うことになるため、正確な情報を記入しておかないと、過剰な課税や還付漏れの原因になります。

確定申告書 第二表は、見落としがちな記入項目も多いため、必要な情報を事前に整理しておくことが大切です。特に控除に関する証明書や扶養家族の情報は、間違いがあると控除が受けられなくなる可能性もあるため、丁寧に確認しながら進めましょう。個人事業主にとっては第一表とセットで正確に記入することが、確定申告成功のカギとなります。

参考:【初めての確定申告】個人事業主向け申告書の書き方をわかりやすく解説

ケース別|こんなときはどう書く?記入例つきで解説

ケース別|こんなときはどう書く?記入例つきで解説

確定申告書は基本的な記入ルールに加えて、状況に応じた記入が必要です。個人事業主だけでなく、給与所得者、副業をしている人、医療費や住宅ローン控除を受けたい人など、それぞれのケースに応じた書き方を理解することが大切です。ここでは、代表的な6つのケースごとに、どのように確定申告書を記入すべきかを解説します。

給与所得だけがある場合

会社員として1か所から給与を受けているだけで、年末調整が済んでいる場合、基本的には確定申告は不要です。ただし、以下のような場合は申告が必要です。

  • 年末調整が行われていない(転職・退職時)
  • 医療費控除や住宅ローン控除を初めて受ける
  • 寄附金控除(ふるさと納税など)を適用する

【記入のポイント】

  • 確定申告書 第一表の「収入金額等」欄に給与収入を記入(源泉徴収票の「支払金額」欄)
  • 「所得金額等」欄に給与所得控除後の金額を記入(源泉徴収票の該当欄)
  • 第二表で「所得の内訳」として勤務先名・住所・支払金額・源泉徴収税額を記載

給与所得と事業所得の両方がある場合

平日は会社員として働きながら、副業として個人事業主として活動しているケースです。この場合、給与所得と事業所得の両方を申告する必要があります。

【記入のポイント】

  • 第一表の「収入金額等」に「給与」「事業」の両方を記載
  • 「所得金額等」にそれぞれの所得(控除後の金額)を記入
  • 第二表では給与の支払元・金額と、事業収入の内訳(取引先名など)を分けて記入
  • 青色申告の場合は「所得税青色申告決算書」も提出し、最大65万円の特別控除が可能

このように、複数の所得区分がある場合は、それぞれを正しく分けて記載することが重要です。

副業所得がある場合

アルバイトやフリマアプリ、アフィリエイトなど、副業で得た所得が年間20万円を超えると確定申告が必要です(給与所得者の場合)。個人事業主の場合は、すべての副業も含めて一体で申告します。

【記入のポイント】

  • アルバイト収入は「給与所得」か「雑所得」に該当(支払者から源泉徴収票が出れば給与所得)
  • アフィリエイトなどは「雑所得」または「事業所得」
  • 「雑所得」として記載する場合、収入金額と経費を差し引いた利益を記載

※所得が少額でも住民税の申告が必要になる場合があるため、自治体の確認も忘れずに。

住宅ローン控除を初めて申告する場合

マイホームを住宅ローンで購入した場合、初年度は確定申告をして「住宅借入金等特別控除」を申請することで、所得税が還付されるケースがあります。2年目以降は年末調整で対応できます。

【記入のポイント】

  • 第一表で「所得から差し引かれる金額」の欄に控除額を記載
  • 「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」を別途作成・添付
  • 第二表の「特例適用条文等」欄にも記載が必要
  • 控除対象となる住宅ローンの残高証明書を添付
  • 登記事項証明書、売買契約書のコピーも提出する

誤記や添付漏れがあると控除が認められない場合もあるため、提出書類のチェックは念入りに行いましょう。

医療費控除や生命保険料控除を受ける場合

1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合(基本的には10万円超)、または生命保険料を支払っている場合には、控除を受けることで税金を減らせます。

【記入のポイント】

  • 第一表の「所得から差し引かれる金額」欄に該当額を記入
  • 医療費控除の場合:「医療費控除の明細書」を添付(領収書の添付は不要。ただし5年間の保管義務あり)
  • 生命保険料控除の場合:保険会社から送付される「控除証明書」の金額を記入
  • 第二表にも保険料控除の内訳を詳細に記載

医療費控除は、家族の分を合算できる点も見逃せません。家計単位で整理しておくと有利です。

無職や収入が0円だった場合

1年間に収入がなかった、または極めて少額であったというケースでも、確定申告を行うことで住民税の減免や国民健康保険料の軽減措置につながる可能性があります。

【記入のポイント】

  • 第一表の「収入金額等」および「所得金額等」は0円で記入
  • 控除の申請がある場合は「所得から差し引かれる金額」に記載
  • 還付申告(源泉徴収されていた場合)は記入・提出により還付を受けられる

また、翌年以降に開業予定の個人事業主であっても、前年の状況を申告しておくことで、行政サービスや融資の申し込みにおいて「確定申告済み証明書」を取得できるメリットもあります。

これらのケース別の記入方法を知っておくことで、自分の状況に合った正確な確定申告書が作成できます。特に個人事業主は収入の種類が多様になりがちなため、事前に書類を整理し、適切な区分で記入することがミスを防ぐコツです。少しでも不安がある場合は、税務署の無料相談や確定申告ソフトのガイド機能を活用しましょう。

参考:確定申告の書き方まとめ!わかりやすい記載例も併せて解説

確定申告書 第三表・第四表の書き方

確定申告書 第三表・第四表の書き方

個人事業主の確定申告では、基本的に第一表と第二表を提出すれば足りますが、場合によっては第三表・第四表といった追加の書類が必要になることもあります。これらは特定の所得がある、または損失が発生した場合など、少し専門的な内容になりますが、正しく記入すれば節税や還付につながる大切な項目です。ここでは、第三表・第四表の概要と、記入すべき具体的なポイントについて解説します。

分離課税所得がある場合(株式・不動産など)

確定申告書の「第三表(分離課税用)」は、株式の売却益や不動産の譲渡など、分離課税される所得がある場合に提出します。分離課税とは、通常の所得(事業所得・給与所得など)とは別に税額を計算する制度で、主に以下のような所得が対象です。

  • 株式や投資信託などの譲渡益
  • 不動産の譲渡益(土地・建物の売却)
  • 退職所得(一定条件下)
  • 山林所得 など

【記入のポイント】

  • 株式の売却による所得がある場合は、「上場株式等に係る譲渡所得等の金額」欄に記入します。証券会社から送られてくる「年間取引報告書(特定口座年間取引報告書)」を参照するとスムーズです。
  • 不動産を売却した場合は、「土地建物等に係る譲渡所得等の金額」に記入します。取得費・譲渡費用・保有期間などの情報をもとに、譲渡所得の計算を行います。
  • 計算結果は、税務署の提供する「譲渡所得の内訳書」などを使ってまとめ、第三表に転記します。
  • 「課税される所得金額」や「税額の計算」欄に、上記の所得ごとの税率に基づく税額を記載します(株式は一律20.315%、不動産は保有期間により15%または30%など)。

また、上場株式の譲渡損失がある場合には、翌年以降に繰り越すための手続きをここで行うことも可能です(損失の繰越控除)。

青色申告で事業所得の損失がある場合

確定申告書の「第四表(損失申告用)」は、青色申告をしている個人事業主が、その年に事業所得で赤字(損失)が出た場合に記入します。この損失は、他の所得と相殺すること(損益通算)ができ、さらに相殺しきれなかった損失は翌年以降に繰り越すことも可能です。

【記入のポイント】

  • 「損失又は所得の金額」欄に、赤字額を記入します(マイナスの金額として記載)。
  • 「損益通算」の欄には、他の所得(たとえば給与所得や雑所得)と通算した結果、差し引けた損失額と、差し引けなかった損失額を分けて記入します。
  • 「翌年以後に繰り越す損失額」には、控除しきれなかった金額を記入。これにより翌年以降の課税所得から同額を差し引くことが可能になります。
  • 繰越控除を受けるには、申告書の提出だけでなく、翌年以降も継続して確定申告を行う必要があります(連続して申告することが条件です)。

この損失申告の仕組みは、特に開業初年度などで経費が先行して赤字になるケースにおいて、大きな節税効果を生む可能性があります。仮に翌年黒字になった場合でも、前年の損失を繰り越すことで課税対象を圧縮できるのです。

また、青色申告者に限らず、地震や災害、盗難などによって資産に損失が生じた場合も、第四表を使って「雑損控除」を申告することができます。その場合は、損害額の計算に関する詳細な資料の提出が必要です。

第三表や第四表の記入には、通常の第一表・第二表よりも複雑な計算や書類の添付が必要になることが多いため、個人事業主であっても初めて記入する際は会計ソフトを活用したり、税務署での無料相談を受けたりするのが安全です。正確に記入することで、不要な税負担を避け、節税効果を最大限に活かせる確定申告を実現しましょう。

参考:個人事業主・フリーランス必見!確定申告書の書き方をイチから解説【手書きにも対応】

書き方で迷ったときの解決法

書き方で迷ったときの解決法

個人事業主として確定申告書を作成していると、「この項目の書き方で合っているのか分からない」「控除の対象になるかどうか判断できない」など、迷うことも多いものです。特に初めて確定申告を行う方にとっては、専門用語や制度の複雑さに戸惑ってしまうことも少なくありません。

そこで本章では、確定申告書の書き方で迷ったときに頼れる3つの方法——「税務署への相談」「確定申告ソフトの活用」「税理士への依頼」について、それぞれの特徴やメリットを解説します。

税務署に相談する方法

確定申告書の記入方法で不明点がある場合、最も基本的な相談先は「税務署」です。全国各地にある税務署では、毎年1月下旬~3月中旬にかけて、申告書の記入方法について無料相談を受け付けています。

【相談の流れ】

  • 最寄りの税務署に電話またはWebサイトから相談予約
  • 確定申告相談窓口で職員に直接質問できる(対面または電話)
  • 書類の記入を一緒に確認してもらえることもある

【相談に持参すべきもの】

  • マイナンバーカード(または通知カード+本人確認書類)
  • 必要な書類(源泉徴収票、控除証明書、帳簿など)
  • 作成途中の申告書や、分からない箇所に付箋をつけておくとスムーズ

ただし、繁忙期は混雑しやすく、待ち時間が長くなることもあります。相談はなるべく早めの時期に予約・訪問するのがベストです。

確定申告ソフトの活用がおすすめ

税務署に行く時間がない、もしくはある程度の知識がある方には、確定申告ソフトの活用がおすすめです。多くの個人事業主が導入している人気のクラウド型会計ソフトでは、帳簿付けから申告書の自動作成までワンストップで完了できます。

確定申告ソフトを活用する主なメリット

  • 専門知識がなくても、質問に答えるだけで申告書が作成できる
  • 自動計算機能で転記ミスや計算ミスを防げる
  • 青色申告特別控除(最大65万円)にも対応
  • e-Taxに対応しており、オンラインでそのまま申告が完了

人気ソフトの例

  • freee会計
  • マネーフォワード クラウド確定申告
  • 弥生の青色申告オンライン

費用の目安

  • 月額1,000円〜3,000円程度(年間1万円前後)
  • 確定申告時期だけ使えるスポット契約も可能

初心者でも直感的に使いやすいインターフェースが揃っており、銀行口座やクレジットカードとの連携により取引データの自動取込も可能です。記帳から申告までの負担を大きく軽減してくれる頼もしいツールです。

税理士に依頼するメリットと費用相場

「どうしても自分で確定申告するのが不安」「間違いがあると怖い」「本業に集中したい」という方には、税理士への依頼という選択肢があります。特に事業規模が大きくなってきた場合や、経費・控除が複雑な場合には、専門家に任せることで安心して申告ができます。

【税理士に依頼するメリット】

  • 節税アドバイスが受けられる(税法の専門知識が豊富)
  • 書類の作成・提出まですべて代行してくれる
  • 税務調査が入った場合も代理対応してくれる
  • 長期的な経営アドバイスがもらえることもある

【費用相場】

  • スポットでの申告書作成依頼:3万〜10万円程度
  • 年間顧問契約(記帳・決算・申告含む):月額1万〜3万円+決算料10万〜15万円前後

費用は事業の規模や業種、依頼内容によって変わるため、複数の税理士事務所で見積もりを取るのがおすすめです。最近では、オンラインで相談・契約できる「クラウド税理士」サービスも増えており、地方に住んでいる方でも気軽にプロに依頼できる環境が整っています。

このように、確定申告書の書き方で迷ったときは、自分の状況やスキルに合わせて「税務署」「ソフト」「税理士」のいずれかを選ぶことで、確実かつ効率的に申告作業を進めることができます。特に個人事業主は、ミスや漏れがあると大きな税負担につながる可能性があるため、困ったときは早めに相談・対策をとることが成功のカギです。

参考:確定申告書の書き方 - 個人事業主・フリーランスの記入例つき

確定申告書の提出方法と期限

確定申告書の提出方法と期限

確定申告書を正しく作成しても、提出しなければ意味がありません。特に個人事業主にとっては、提出方法や提出期限を守ることがとても重要です。万が一、期限に間に合わなかった場合には、ペナルティや延滞税が課されるリスクもあります。この章では、確定申告書の提出方法や期限、そして期限を過ぎた場合の対応について詳しく解説します。

提出期間と提出方法(e-Tax・郵送・窓口)

まず、確定申告書の提出期間は毎年共通しており、以下のように定められています。

■ 所得税の確定申告提出期間(令和6年分の場合)
2025年2月17日(月)〜3月17日(月)まで

この期間内に、申告書を提出する必要があります。提出方法は主に次の3つがあります。

① e-Tax(電子申告)
インターネットを通じて国税庁の「e-Taxシステム」から確定申告書を提出する方法です。近年ではスマホやパソコンを使ったオンライン申告が主流になりつつあります。

【メリット】

  • 24時間いつでも提出可能
  • 確定申告ソフトと連携すれば自動送信も可能
  • 還付金が早く振り込まれる(2〜3週間程度)

【注意点】

  • マイナンバーカードとICカードリーダー、またはマイナポータル連携が必要
  • 初回設定に手間がかかる場合がある

② 郵送による提出
確定申告書を印刷して、所轄の税務署に郵送する方法です。

【メリット】

  • 自宅で記入・準備できる
  • 控えに税務署の受領印が欲しい場合は返信用封筒を同封することで対応可能

【注意点】

  • 郵送日(消印)で期限内かどうか判断されるため、最終日はポストの集荷時間に注意
  • 不備があると受理されない可能性があるため、事前にしっかり確認が必要

③ 税務署の窓口で提出
最寄りの税務署に直接書類を持参する方法です。

【メリット】

  • 職員がその場で受け取ってくれるので安心
  • 記載漏れを指摘してもらえることもある

【注意点】

  • 確定申告期間中は非常に混雑する
  • 開庁時間(通常平日8:30〜17:00)を確認しておく

いずれの提出方法でも、提出書類の不備があると受理されず、申告が遅れたことになります。提出前に再度チェックリストを確認し、添付書類の漏れがないようにしましょう。

提出期限を過ぎた場合の対応方法

確定申告の提出期限を過ぎてしまった場合でも、すぐに諦める必要はありません。遅れてしまった場合の対応方法を知っておくことで、損失を最小限に抑えることができます。

■ 還付申告の場合は5年間有効
税金の還付(払いすぎた税金の返還)を受ける目的の確定申告であれば、期限を過ぎても5年間は提出可能です。例えば、2024年分の還付申告は2025年1月1日から2029年12月31日まで提出できます。

【対象例】

  • 源泉徴収された税金の還付
  • 医療費控除や住宅ローン控除による還付

■ 納付が発生する申告の場合は「期限後申告」扱いに
納付すべき税金があるにもかかわらず、期限までに提出できなかった場合は「期限後申告」となり、以下のようなペナルティが課されることがあります。

  • 無申告加算税:原則15%(税務署から指摘が入る前に自主的に申告すれば5%)
  • 延滞税:納期限の翌日から日数に応じて加算(年率最大7.3%程度)

このようなペナルティはありますが、早く申告すればするほど負担は少なく済みます。期限を過ぎた場合でも、できるだけ早めに申告・納付することが重要です。

■ e-Taxでも期限後申告は可能
e-Taxを利用すれば、期限後でもオンラインで確定申告ができます。状況によっては税務署に事情を説明したうえで「更正の請求」や「修正申告」といった手続きが必要な場合もあります。

参考:フリーランスの青色申告承認申請書の書き方|65万円の控除を受けるための手続きを解説

確定申告の書き方に関するよくある質問

確定申告の書き方に関するよくある質問

確定申告の対象期間は?

確定申告の対象期間は、前年の1月1日から12月31日までの1年間です。たとえば2025年3月に提出する確定申告は、2024年1月1日~12月31日までの所得を申告するものです。提出期間は翌年の2月16日〜3月15日ごろまで(年により微調整あり)です。対象期間と提出期間を混同しないよう注意しましょう。

間違えた場合の修正申告のやり方は?

提出後に誤りが判明した場合は、「修正申告」または「更正の請求」で対応します。納める税額が増える場合は修正申告を行い、税務署に改めて申告書を提出します。一方、納めすぎた税金を返してほしいときは、更正の請求を提出し、還付を申請します。e-Taxからも対応可能で、訂正理由を明記する必要があります。間違いに気づいたら、早めの対応が重要です。

モノクロ印刷でも大丈夫?

はい、確定申告書はモノクロ印刷でも問題なく提出できます。国税庁の公式サイトでも「白黒印刷可」と明記されており、カラーでなければいけないという決まりはありません。インクの節約やプリンターの都合で白黒印刷を使っても、税務署での受理に支障はありません。ただし、印刷が不鮮明な場合や、バーコード部分が読み取れないと受付できないこともあるため、印刷品質には気をつけましょう。

参考:確定申告書の書き方・作成手順をわかりやすく解説

個人事業主の確定申告に関するまとめ

個人事業主の確定申告に関するまとめ

確定申告書の書き方のポイントをおさらい

確定申告書の書き方は、初めての方には複雑に思えるかもしれませんが、基本の流れを押さえれば着実に進めることができます。ポイントは以下のとおりです。

  • まず自分の申告内容に合った書類(第一表・第二表・第三表など)を選ぶ
  • 所得・控除・税額を正しく記入し、計算ミスを防ぐ
  • 控除を受けるための証明書や必要書類をきちんと添付
  • 提出期限内に確実に提出する(e-Taxなら効率的)

特に個人事業主は記帳や帳簿の整理が前提となるため、日ごろの管理が確定申告の精度を左右します。

迷ったら活用できる便利ツールの紹介

確定申告の準備や書類作成で困ったときは、次のような便利ツールやサービスの利用をおすすめします。

  • 国税庁「確定申告書等作成コーナー」:Web上で申告書を自動作成・印刷できる無料サービス
  • 会計ソフト(freee・マネーフォワード・弥生など):帳簿作成から申告書提出まで一貫して対応
  • 税務署の無料相談窓口:申告期間中に税理士が無料で相談対応する日もあります
  • スマホアプリでの申告(e-Tax):マイナンバーカードがあれば、スマホでの提出も可能

これらのツールを活用すれば、知識がなくてもスムーズに確定申告書を作成できます。自分に合った方法を選んで、正確で無理のない申告を目指しましょう。