赤字でも確定申告すべき?個人事業主にとってのメリットとデメリットを解説

「今年は赤字だったから確定申告は不要では?」と思う個人事業主も少なくありません。しかし、赤字であっても確定申告を行うことで、将来の節税につながる「損失の繰越控除」などのメリットを受けられる可能性があります。一方で、申告には手間や注意点もあるため、状況に応じた判断が重要です。本記事では、赤字でも確定申告すべき理由や、そのメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。
個人事業主は赤字でも確定申告すべき?

個人事業主として事業を行っていると、必ずしも毎年黒字になるとは限りません。売上が伸び悩んだり、設備投資や経費がかさんだりすると「赤字」になることもあるでしょう。そんなとき、「赤字でも確定申告は必要なの?」「そもそも確定申告の義務はあるの?」と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。
結論からいえば、個人事業主は赤字でも確定申告をすべきです。なぜなら、赤字申告には大きなメリットがあるうえ、場合によっては確定申告が義務となるケースもあるからです。
この章ではまず、「赤字」の定義を確認し、確定申告義務の有無、そして申告が必要となるケースについて詳しく解説します。
そもそも「赤字」とはどういう状態か
税務上でいう「赤字」とは、収入よりも必要経費が上回っている状態を指します。具体的には、確定申告書の「事業所得」欄で算出される所得金額が0円未満(マイナス)である場合、その年は「赤字」となります。
例えば、年間の売上が300万円だったとしても、仕入れや経費が350万円かかった場合は、50万円の赤字という扱いになります。このような「赤字」は、帳簿上の数字であるため、手元に現金が残っているかどうかとは必ずしも一致しません。
なお、ここでいう「赤字」は、事業所得だけでなく、不動産所得や雑所得、副業収入など他の所得区分に対しても関係してくる場合があります。特に複数の収入源がある個人事業主は、損益通算や繰越控除などの特例を受けられる可能性があるため、「赤字」であっても申告は重要です。
赤字でも確定申告は義務なのか?
個人事業主が赤字だった場合、原則として所得税は発生しません。そのため、「税金が発生しないなら確定申告も不要では?」と思うかもしれませんが、実際はそうとも限りません。
確定申告が法的に義務付けられるのは「所得がある場合」です。赤字で所得が0円以下の場合、法律上は「申告義務なし」とされるケースもあるのは事実です。ただし、次のような場合には、赤字でも申告が義務となる、または強く推奨される状況が多くあります。
特に、青色申告をしている個人事業主は要注意です。青色申告の特典である「赤字の繰越控除」や「繰戻し還付」を受けるには、赤字でも確定申告を行う必要があります。このように、赤字であっても申告しないことで将来的な節税チャンスを失う可能性があるのです。
また、副業で収入がある場合や、複数の所得を持っている場合などは、赤字でも確定申告によって損益通算できる可能性があります。これにより、課税所得が圧縮され、結果的に所得税や住民税の節税につながるケースもあります。
赤字申告が必要になるケースとは
赤字でも確定申告が必要、またはしておくべきケースには、以下のようなものがあります。
1. 青色申告で赤字を繰り越したい場合
青色申告者は、赤字を最大3年間繰り越して、翌年以降の黒字と相殺(損失繰越控除)できます。これは節税効果が非常に高いため、将来黒字になる見込みがある個人事業主は必ず申告しておくべきです。
2. 前年黒字だった場合(繰戻し還付)
赤字となった年に確定申告を行えば、前年が黒字であった場合に過去に納めた税金を一部取り戻せる可能性(繰戻し還付)があります。これも青色申告をしている個人事業主に限られる特典です。
3. 他の所得と損益通算したい場合
給与所得、不動産所得、雑所得などがある場合、赤字を他の所得と相殺する「損益通算」が可能なことがあります。これにより、課税所得が減り、所得税や住民税の軽減が見込めるため、申告の価値は十分にあります。
4. 所得を証明する必要がある場合
住宅ローンや事業資金融資、保育園の入園手続きなどで「所得証明書」や「非課税証明書」の提出を求められることがあります。赤字であっても確定申告をしていなければ、証明書の発行ができないため手続きに支障をきたす可能性があります。
5. 国民健康保険料の軽減措置を受けたい場合
多くの自治体では、確定申告をもとに国民健康保険料の算定を行います。申告をしていないと、正しい所得が反映されず、必要以上の保険料が課されるケースも。赤字申告によって、保険料が軽減されることもあるため、これも重要な理由の一つです。
参考:個人事業主が赤字でも確定申告すべき5つの理由とは?申告書の書き方やデメリットも解説
赤字でも確定申告をすべき5つのメリット

赤字であっても確定申告を行うことで、個人事業主は様々なメリットを享受できます。税金が発生しないからといって確定申告をしないと、将来的な節税効果や社会的信用の構築など、重要な機会を失ってしまう可能性があります。
ここでは、個人事業主が赤字でも確定申告をすべき5つの具体的な理由をわかりやすく解説します。いずれも、特に青色申告を選択している方にとっては重要なポイントばかりです。
1. 赤字を翌年以降に繰り越せる(繰越控除)
赤字を繰り越して、将来の黒字と相殺できる制度を「繰越控除」といいます。これは、青色申告者のみが利用できる大きな節税メリットです。
たとえば、2024年に100万円の赤字が出た場合、確定申告をしておけば、その赤字を翌年2025年の黒字所得と相殺できます。2025年に150万円の黒字が出たとすると、100万円分は赤字と相殺され、課税対象は実質50万円だけになるのです。
この繰越は最大で3年間可能であり、継続して確定申告を行うことが条件です。逆に、赤字の年に確定申告をしなければ、この繰越控除の権利を失ってしまいます。
ポイント:赤字を出した年の申告を忘れると、翌年の節税チャンスを逃してしまう。
2. 前年度の黒字と相殺して還付を受けられる(繰戻し還付)
もうひとつ、赤字申告における青色申告者の特典が繰戻し還付です。これは、赤字が出た年の損失を前年度の黒字と相殺し、既に納めた税金を取り戻せる制度です。
たとえば、2023年に300万円の黒字で所得税を納付し、2024年に200万円の赤字となった場合、2023年に支払った所得税の一部が還付される可能性があります。
この制度は青色申告者に限られ、確定申告書に「損失申告用の第四表(二)」を添付する必要があります。書類作成にやや手間はかかりますが、納税した税金が返ってくる可能性があるため、非常に魅力的な制度です。
ポイント:前年に黒字・納税実績がある人は、赤字の年に申告することで税金の「取り戻し」が可能になる。
参考:赤字の個人事業主が確定申告するメリット&デメリット!処理手順も
3. 他の所得と損益通算できる

赤字が出たとしても、他に所得がある場合には、赤字分を他の所得と相殺(損益通算)することが可能です。これにより、総合的な課税所得が減り、結果として税額が軽減されることになります。
たとえば、個人事業で100万円の赤字が出たけれど、給与所得が200万円ある場合、損益通算をすることで課税対象は100万円になるという仕組みです。これによって所得税や住民税が軽減されるケースも少なくありません。
ただし、損益通算が可能なのは一定の所得(事業所得・不動産所得・山林所得など)に限られます。給与所得や雑所得との損益通算は制限がありますが、副業が事業所得と認められる場合などには、赤字を有効活用できます。
ポイント:複数の所得がある個人事業主は、損益通算で納税額を抑えられる可能性あり。
4. 所得証明として利用できる
確定申告を行うことで、税務署からの「課税証明書」や「非課税証明書」などの公的書類を取得することが可能になります。これらの書類は、住宅ローンや事業融資、保育園の入園、社会保険の手続きなど、あらゆる場面で「所得を証明」するために必要となります。
たとえ赤字であっても、申告をしていなければ証明書の発行ができず、社会的信用の構築に支障が出る可能性があります。特にフリーランスや個人事業主は、会社員とは違い、収入の証明が難しい立場です。確定申告は、事業を継続していくための「信用を得るためのツール」ともいえるのです。
ポイント:赤字でも申告することで、所得証明や非課税証明の発行が可能になり、社会的信用を得られる。
5. 国民健康保険料が軽減される可能性がある
個人事業主が加入している国民健康保険料は、前年の所得をもとに計算されます。このため、赤字であっても確定申告をしていなければ、自治体が正しく所得を把握できず、不必要に高い保険料を課される可能性があります。
例えば、確定申告をしなかった場合、自治体によっては「所得が不明」として均等割・平等割だけでなく、最大額の所得割を課されるケースもあります。逆に、しっかり赤字申告を行えば、所得が低い(もしくはゼロ)と判断され、保険料の軽減措置を受けられることがあります。
また、国民年金保険料にも影響が出ることがあります。免除申請や納付猶予の審査時にも所得証明が求められるため、赤字でも確定申告をしておくことで、将来の生活設計がしやすくなるというメリットもあります。
ポイント:赤字申告をしておけば、国民健康保険料や年金の負担を軽減できるチャンスがある。
以上の5つが、個人事業主が赤字でも確定申告を行うべき理由です。
確定申告は「納税のための手続き」と考えがちですが、赤字のときこそ申告することで、節税・還付・信用構築・社会保障の面で大きな恩恵を受けられます。特に青色申告を行っている方は、繰越控除や繰戻し還付などを活用するために、毎年の申告を欠かさず行うことが重要です。
次章では、逆に赤字で確定申告を行うことによる注意点やデメリットについて解説していきます。
参考:赤字の場合でも確定申告をすべき?メリット・デメリットや書き方を解説
赤字で確定申告することのデメリット

個人事業主が赤字でも確定申告をすることで得られるメリットは多くありますが、一方で注意しておきたいデメリットも存在します。確定申告を行うということは、自らの収支情報を税務署に開示することになるため、場合によっては資金調達や税務調査などに影響が出るリスクも考えられます。
ここでは、赤字でも確定申告をする際に知っておきたい3つのデメリットを紹介します。
資金調達時に不利になる可能性
個人事業主が事業拡大のために融資を受けたい場合、金融機関や信用金庫、あるいは日本政策金融公庫などに確定申告書の提出を求められることが一般的です。その際、連続して赤字決算の申告をしていると、「事業がうまくいっていない」と判断される可能性が高くなります。
たとえ実際には黒字に転換する見込みがあったとしても、申告上の赤字が与える印象は非常に大きく、審査が通りにくくなるケースが少なくありません。特に、開業間もない個人事業主や、売上の波が激しい業種では注意が必要です。
また、住宅ローンや自動車ローンの審査においても、直近の所得状況が評価対象となるため、赤字申告しか提出できない場合は不利になることがあります。
税務調査の対象になりやすくなることも
確定申告で「赤字」と申告している個人事業主は、経費の計上が多くなりがちです。そのため、税務署側から「本当に正当な経費なのか?」「必要以上に経費を水増ししていないか?」と疑われるリスクが出てきます。
特に、複数年にわたって赤字が続いている場合や、交際費や交通費などの変動が激しい場合は、税務調査の対象となる可能性が高まります。実際、赤字申告の裏には「節税狙いの過度な経費計上」があるとみなされることもあります。
もちろん、きちんと帳簿付けを行い、領収書などの証拠書類を保管していれば問題はありませんが、記録が曖昧なまま赤字申告をしてしまうと、余計な調査や指摘を受けることにもなりかねません。
申告や帳簿作成の手間がかかる
赤字であっても確定申告を行うには、当然ながら帳簿の作成や書類の準備が必要です。収支の管理がしっかりできていない場合、申告の準備にかなりの時間や労力がかかってしまうことがあります。
特に、青色申告で繰越控除や繰戻し還付を受けるためには、複式簿記による帳簿付けと、正確な申告書類の作成が求められます。また、赤字を証明するための根拠資料(領収書・契約書など)も保管しておく必要があります。
会計ソフトを使えばある程度の手間は省けますが、それでも毎年の申告作業は避けられません。さらに、申告書には「第四表(損失申告用)」を添付する必要があるなど、通常の確定申告よりも工程が増えるケースもあります。
このように、赤字での確定申告には注意すべき点も存在します。ただし、これらのデメリットは多くが「適切な準備と対策で回避可能」なものであるともいえます。帳簿管理をしっかり行い、確実な申告を心がけることで、リスクを最小限に抑えながら節税効果を得ることができます。
次章では、赤字で確定申告するかどうかの判断基準について詳しく解説していきます。
参考:収入より経費が多い個人事業主は確定申告の義務がある?行うメリットや申告書の書き方を解説
赤字で確定申告するかどうかの判断基準

個人事業主が赤字になった場合、必ずしも確定申告が法律上の義務になるとは限りません。とはいえ、将来的な節税や社会的信用の確保を考えると、赤字であっても確定申告すべきケースが多いのが実情です。
では、どういった場合に赤字でも確定申告を行うべきなのでしょうか?ここでは、判断基準となる3つのポイントをご紹介します。
今後の黒字見込みがあるか
最も重要な判断材料となるのが、将来の黒字化の見込みがあるかどうかです。たとえば、開業初年度は準備費用や設備投資で赤字になってしまったとしても、翌年以降に売上が増加し黒字に転じる見通しがある場合には、赤字を繰り越すことで将来の課税所得を減らせる可能性があります。
この「赤字の繰越控除」は青色申告者の特典であり、最大3年間にわたって活用可能です。逆に、今年の赤字を申告しなければ、翌年以降に黒字が出てもその赤字分は無駄になってしまいます。
将来的に利益が見込めるなら、赤字の年でも確定申告を行うことで節税効果が期待できる。
他の所得との関係(損益通算できるか)
個人事業主であっても、本業とは別に給与所得や不動産所得、株式投資などの副収入がある場合には、赤字を活かして損益通算できる可能性があります。
たとえば、事業で100万円の赤字が出ていても、給与所得で300万円の収入があれば、確定申告によって課税所得を200万円に抑えることが可能です。この結果、所得税や住民税が軽減される可能性があります。
ただし、すべての所得が損益通算の対象になるわけではなく、雑所得や譲渡所得などは一部制限があるため注意が必要です。それでも、複数の所得がある個人事業主にとっては、赤字を確定申告することで税負担を軽くできる大きなメリットとなります。
他の所得と合わせて全体の課税額を抑えられるかどうかは、赤字申告の判断における重要な基準。
ローンや行政手続きで所得証明が必要か
個人事業主が赤字であっても、確定申告をしていなければ「収入ゼロ」と見なされてしまう可能性があります。これは、住宅ローン・カーローン・事業融資などの審査時に不利になるだけでなく、保育園の入園申請、児童手当の手続き、国民健康保険料や年金免除の申請などにも影響します。
赤字でも申告をしておけば、「課税証明書」や「非課税証明書」が発行可能になります。これらは各種行政手続きにおける“身分証明”のような役割を果たすため、申告を怠ることで思わぬ不都合が生じることもあります。
以上のように、今後の収益見込み・他の所得との関係・証明書の必要性といった観点から、赤字でも確定申告をすべきかどうかを判断することが大切です。単に「税金がかからないから必要ない」と考えるのではなく、中長期的なメリットと社会的影響も踏まえた上で申告の判断を行いましょう。
参考:個人事業主は赤字(所得税0円)でも確定申告しないといけない?
赤字でも確定申告をする際の具体的な手順

赤字でも確定申告を行うことで、多くのメリットを享受できることはこれまで解説してきた通りです。しかし、実際に申告を行う際には、青色申告と白色申告の違いや、必要書類、書類の書き方などに関する正しい知識が不可欠です。
ここでは、個人事業主が赤字でも確定申告を行う際の基本的な流れと準備すべきことについて解説します。
青色申告と白色申告の違いと選び方
赤字申告をするうえで、最も重要なのが青色申告と白色申告の違いを理解し、適切に選ぶことです。特に赤字を活用した節税をしたい個人事業主には、青色申告が圧倒的に有利です。
青色申告を行うためには、事前に税務署へ「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。開業から2ヶ月以内、または青色申告を始めたい年の3月15日までに提出するのが原則です。まだ提出していない場合は、翌年から青色申告に切り替えることを検討するとよいでしょう。
赤字申告に必要な書類一覧
赤字を含む確定申告を行う際には、以下のような書類が必要です。特に青色申告の場合、提出書類が多くなるので、しっかりと準備を行いましょう。
必要な書類一覧(共通)
- 確定申告書B(第一表・第二表)
- 損失申告用の「第四表」
- 損益計算書(収入と経費の内訳を記載)
青色申告を行う場合
- 青色申告決算書(4ページ構成)
- 総勘定元帳、仕訳帳などの帳簿
- 必要に応じて減価償却費の明細表
その他
- 源泉徴収票(副業収入がある場合)
- 医療費控除や寄附金控除を申請する場合の証明書
- マイナンバー(本人確認書類)
帳簿や書類の作成が煩雑な場合には、会計ソフト(freee、マネーフォワード、弥生など)を活用するのがおすすめです。帳簿の自動生成やe-Tax対応機能により、手間を大幅に削減できます。
確定申告書B・第四表(損失申告用)の書き方
赤字申告で重要になるのが、「確定申告書B」と「第四表(損失申告用)」の正確な記入です。特に第四表は赤字を繰り越したり、前年の黒字と相殺したりするために必須の書類です。
確定申告書B(第一表・第二表)
- 第一表には、事業所得の金額がマイナスであることを記載します。
- 第二表には、所得の内訳や控除項目を記載します。
第四表(損失申告用)
- 「損失の金額」欄に、事業所得等で生じた赤字額を記入。
- 「純損失の繰越控除額」や「損益通算の状況」などを適切に記載。
- 「繰戻し還付」の申請を行う場合は、前年分の申告書や納税額を参照して記入。
特に青色申告で赤字の繰越控除を希望する場合、第四表の記入ミスや未提出があると控除を受けられないため要注意です。書き方に不安がある場合は、税務署に相談するか、税理士への相談も検討しましょう。
このように、赤字でも確定申告をするには事前準備や正確な書類作成が不可欠です。とはいえ、適切に申告すれば、節税や信用構築といった多くの恩恵が得られるのも事実です。特に青色申告の制度を活用することで、将来の黒字化を見据えた資金計画や経営改善にも役立ちます。
参考:個人事業主が赤字でも税金を申告すべき?【赤字でも確定申告をするメリットを解説】
会計ソフトを活用して効率よく赤字申告する方法

赤字であっても確定申告を行う個人事業主にとって、最大のネックとなるのが「帳簿の作成」や「書類の記入」といった煩雑な事務作業です。特に青色申告の場合、複式簿記での記帳や決算書の作成が必要なため、慣れていない方には大きな負担となりがちです。
こうした負担を軽減し、スムーズかつ正確に赤字申告を行うためには、クラウド会計ソフトの活用が非常に効果的です。
会計ソフトなら手間を大幅に削減できる
近年では、「freee会計」「マネーフォワード クラウド確定申告」「弥生会計オンライン」など、個人事業主向けのクラウド型会計ソフトが普及しています。これらのソフトは以下のような機能で、赤字申告時の事務負担を大きく軽減してくれます。
- 銀行口座・クレジットカードとの連携による自動仕訳
- 売上や経費のグラフ表示による視覚的な管理
- 青色申告決算書・確定申告書類の自動作成
- ミスを防ぐガイド機能やチェック機能
- 確定申告の控除額を自動で最適化
これにより、簿記や会計の専門知識がなくても簡単に申告が完了するのが大きな魅力です。また、スマホからの入力にも対応しており、日々の経費登録や帳簿付けも手軽に行えるため、継続的な記帳の習慣化にもつながります。
電子申告(e-Tax)で控除額もアップ
クラウド会計ソフトを活用する最大の利点の一つが、電子申告(e-Tax)との連携です。e-Taxを利用して確定申告を行うと、青色申告特別控除の金額が最大65万円まで増額されるというメリットがあります(紙申告の場合は最大55万円)。
また、e-Taxによる申告には以下のような利点もあります。
- 還付金の受け取りが早くなる
- 申告書の郵送が不要
- 添付書類の一部が省略可能
- 自宅から24時間いつでも申告可能
会計ソフトの多くは、e-Taxに対応しており、そのまま電子申告が完了できる仕組みになっているため、面倒な手続きも簡略化できます。特に赤字申告で損失の繰越や繰戻しを利用する場合、正確性と迅速性が求められるため、e-Taxとの併用が非常に有効です。
参考:個人事業主が赤字になったら?確定申告のメリット・デメリットや手順を解説
赤字での確定申告に関するよくある質問

赤字での確定申告については、個人事業主やフリーランスから多くの疑問が寄せられます。ここでは、特に寄せられることの多い3つの質問に絞って解説します。
赤字でも確定申告しないとどうなる?
赤字の場合、所得が0円以下であれば法律上の申告義務はないこともありますが、申告しないことで損をする可能性が高いです。
たとえば、
- 赤字を繰り越して翌年の節税に使えない
- 課税証明書や非課税証明書が発行されない
- 国民健康保険料の軽減措置が受けられない
など、金銭的・社会的に不利益が生じるケースが多いです。特に、翌年以降に黒字が見込まれる場合や、行政手続きで所得証明が必要な場面があるなら、赤字でも必ず確定申告を行うべきです。
副業で赤字になった場合はどうする?
会社員や主婦などが副業を行い、事業所得として申告する場合に赤字となった場合でも、他の所得(例:給与所得)と損益通算できる可能性があります。ただし、副業が雑所得に該当する場合は損益通算の対象外となるため注意が必要です。
副業の収益が継続的・営利目的で行われており、明確な経費や売上の記録がある場合は、事業所得として申告できる可能性が高まります。赤字を出していても、確定申告を行うことで節税効果を得られることがあるので、見落とさないようにしましょう。
参考:副業で赤字になったら節税になる?税金還付の対象になるかを解説
赤字だと住民税も払わなくていい?
個人事業主が赤字だった場合、所得税は発生しないケースが多いですが、住民税については注意が必要です。
住民税は「所得割」と「均等割」の2種類があり、たとえ所得がゼロでも「均等割」は基本的に発生します。自治体によっては一定の所得以下であれば減免される場合もありますが、確定申告を行っていないと、正確な所得が把握されず軽減措置が適用されない可能性があります。
そのため、赤字であっても確定申告を行い、住民税の計算根拠を明確にしておくことが大切です。