個人事業主に必要な確定申告とは?申告のやり方と注意点をわかりやすく解説

個人事業主として事業を行うと、毎年避けて通れないのが「確定申告」です。確定申告とは、1年間の所得や経費を税務署に申告し、所得税などを正しく納めるための手続きです。しかし、初めて申告する方にとっては「何を準備すればいいの?」「期限に遅れるとどうなる?」など不安も多いはず。本記事では、確定申告の基本からやり方、注意すべきポイントまでを初心者にもわかりやすく解説します。
個人事業主にとっての確定申告とは?

確定申告の基本的な意味
確定申告とは、1年間の所得金額とそれに対する税額を自分で計算して税務署に申告する手続きのことです。会社員であれば年末調整によって所得税の精算が会社により自動的に行われますが、個人事業主の場合は自分自身で申告・納税の義務があります。
申告期間は通常、翌年の2月16日から3月15日までと定められており、この期間内に申告を済ませなければなりません。申告の対象となるのは、前年度の1月1日から12月31日までの所得です。
確定申告には「所得税の申告」をはじめ、住民税や国民健康保険の算定にも関わる重要な情報が含まれています。また、控除を受けたり、税金の還付を受けたりするためにも必要です。
特に、個人事業主が行う確定申告は、「青色申告」と「白色申告」の2種類に分かれ、それぞれ提出する書類や要件が異なります。後ほど詳しく解説しますが、青色申告は節税効果が高いため、多くの個人事業主が選択する方法です。
個人事業主が確定申告すべき理由
個人事業主が確定申告を行う理由は、主に以下の3つに集約されます。
- 法律で義務付けられているため
所得があるすべての個人事業主は、所得税法に基づき確定申告を行う義務があります。たとえば、年間所得が48万円を超える場合、基本的に申告が必要です。収入が少ない場合でも、他の収入と合算して基準を超えると申告対象になるため注意が必要です。 - 適切な納税を行うため
確定申告を通じて、自身の所得を正確に税務署に報告し、所得税・住民税・事業税などを納める必要があります。これを怠ると、延滞税や無申告加算税などのペナルティが課せられる可能性があります。 - 税制優遇や各種手続きのため
確定申告は、税制上の控除や優遇措置を適用するための入口でもあります。例えば、青色申告の特別控除(最大65万円)や、各種控除(医療費控除・寄附金控除など)を適用するためには、確定申告が必須です。また、住宅ローン審査や奨学金、保育所の申込時に所得証明が必要となるケースでも、確定申告が行われていることが重要になります。
確定申告を行うことで得られるメリット
確定申告は「面倒」「難しそう」というイメージが強いかもしれませんが、正しく行うことで多くのメリットが得られます。
1. 節税効果が高まる
特に青色申告を行うことで、最大65万円の特別控除を受けられるほか、家族に支払った給与を経費として計上できる「青色事業専従者給与」制度も利用できます。これにより、所得税・住民税・事業税の負担を大幅に軽減することが可能です。
2. 所得証明として活用できる
確定申告書の控えや納税証明書は、金融機関の融資審査やクレジットカード、住宅ローンの審査、補助金の申請などで、信頼できる収入証明として使えます。個人事業主が事業を拡大する際にも重要な資料です。
3. 還付が受けられる可能性がある
フリーランスや個人事業主として源泉徴収された報酬がある場合、確定申告によって税金が戻ってくるケースも多々あります。特に年間所得が低めで、すでに源泉徴収されている場合には、確定申告をしないと損をすることもあります。
4. 事業の収支管理が明確になる
確定申告を通じて、売上・経費・利益をきちんと整理することで、事業全体の見える化が実現します。これは、経営戦略を立てたり、無駄な支出を見直したりする上でも非常に有効です。
参考:【個人事業主・自営業向け】確定申告のやり方をわかりやすく解説
確定申告が必要な個人事業主の条件とは

どんな収入があると確定申告が必要になるか
個人事業主は、一定以上の所得がある場合、法律で確定申告が義務付けられています。ここで重要なのは「収入」ではなく「所得」です。
所得とは、「収入金額(売上)」から「必要経費(仕入れや交通費など)」を差し引いた金額のことです。たとえば、年間の売上が500万円でも、経費が450万円であれば、所得は50万円ということになります。
では、所得がいくら以上になると確定申告が必要なのでしょうか?
所得の基準(2025年提出時点)
- 基礎控除額:48万円
これはすべての納税者に適用される控除額です。つまり、年間の所得が48万円を超えると、原則として確定申告が必要になります。 - 事業所得・不動産所得・山林所得がある場合
この3つの所得がある人は、たとえ所得が少額でも、原則として申告義務があります。たとえば、フリーランスとしてWEB制作やライター業などで得た収入も「事業所得」に該当します。 - 所得が赤字でも申告が必要な場合がある
青色申告をしている個人事業主で赤字が出た場合、その赤字を3年間繰り越すことが可能です。この「純損失の繰越控除」を活用するためには、赤字であっても確定申告が必要です。 - 源泉徴収されている報酬を受け取った場合
クラウドソーシングや業務委託契約で報酬を得ている場合、報酬の一部が**あらかじめ税金として引かれて(源泉徴収)**いることがあります。このような場合、確定申告を行うことで還付を受けられる可能性があります。
このように、個人事業主として何らかの収入がある人は、原則として確定申告が必要と考えておいたほうがよいでしょう。
確定申告が不要なケース
一方で、すべての個人事業主が毎年必ず確定申告をしなければならないわけではありません。以下のようなケースでは、確定申告が不要な可能性があります。
1. 所得が48万円以下の場合
前述のとおり、所得金額が基礎控除の範囲内(48万円以下)であれば、確定申告の義務はありません。ただし、住民税の申告は必要になることがあります。
2. 年末調整で完結している給与所得者のみの場合
会社員として給与を受けており、副業をしていない人は、通常会社が年末調整を行ってくれるため、確定申告は不要です。ただし、副業で個人事業を始めた場合は別です(後述)。
3. 扶養控除内でアルバイトをしている学生など
学生や主婦などで、年間の所得が103万円以下かつ個人事業を営んでいない場合は、確定申告の義務は基本的に発生しません。
4. 専業主婦がハンドメイド販売などで少額の収入を得ている場合
たとえば、フリマアプリやハンドメイド作品の販売でわずかな収入がある場合でも、利益が48万円を超えなければ申告は不要です。ただし、収益が安定し、継続的な事業とみなされるようになった場合は、確定申告が必要になることもあります。
副業や複数所得がある場合の扱い
近年では、「副業解禁」に伴って、会社員として働きながら個人事業主として活動する人が増えています。このようなケースでは、収入の種類や金額によって確定申告の必要性が変わってきます。
副業で個人事業をしている場合
たとえば、本業で年収500万円の会社員が、副業で年間100万円の売上を得ている場合、副業収入が事業所得または雑所得として扱われます。このとき、所得が20万円を超えると確定申告が必要です。
※「副業所得が20万円以下なら申告不要」というのはあくまで所得税に限った話で、住民税の申告は必要になる場合があるため、注意が必要です。
複数の所得がある場合
以下のように、さまざまな所得の合計額で判断されます。
- 事業所得
- 給与所得
- 不動産所得
- 配当所得
- 一時所得 など
これらの合計から所得控除を引いた後、課税所得がある場合は確定申告が必要になります。
副業がアルバイトの場合は?
副業がアルバイトで、かつ副業先で年末調整がされていない場合は、確定申告が必要です。また、2ヶ所以上から給与を受け取っている場合も申告が必要になるケースが多いため、給与明細や源泉徴収票を確認しておきましょう。
副業や複数の所得を持つ場合、知らない間に申告義務が発生していることもあるため、こまめな収支の管理と税務知識の習得が不可欠です。個人事業主として活動する場合には、自身の収入構造を正しく把握し、適切に確定申告を行うよう心がけましょう。
青色申告と白色申告の違いを理解しよう

個人事業主が確定申告を行う際には、「青色申告」と「白色申告」のどちらかを選択する必要があります。この2つは、税制上の優遇措置や提出する書類の内容、帳簿の付け方に大きな違いがあるため、個人事業主として適切な選択をすることが重要です。
ここでは、青色申告のメリットや条件、白色申告との違い、どちらを選ぶべきかの判断基準について詳しく解説します。
青色申告のメリットと条件
まず、青色申告の最大の特徴は、税制上の優遇措置が多数用意されている点にあります。事業所得、不動産所得、山林所得がある個人事業主であれば、一定の条件を満たすことで青色申告を選択することができます。
青色申告の主なメリット
- 最大65万円の青色申告特別控除
複式簿記で帳簿を記帳し、e-Taxによる提出や電子帳簿保存を行っている場合、最大65万円の控除が受けられます。紙提出や単式簿記の場合でも10万円または55万円の控除が適用されます。 - 赤字の繰越ができる(純損失の繰越控除)
事業で赤字が出た場合、その損失を3年間にわたって繰り越すことが可能です。将来利益が出た際に、損失分と相殺することで節税につながります。 - 専従者給与を経費にできる
家族に支払った給与を「青色事業専従者給与」として必要経費に計上できます(労務の実態と給与額が妥当であることが条件)。 - 貸倒引当金の設定が可能
売掛金などの未回収リスクに備えて、「貸倒引当金」として経費に計上できます。これも青色申告ならではのメリットです。 - 30万円未満の資産は一括償却が可能
パソコンやオフィス家具など、30万円未満の資産を購入した場合、一括で経費にできる少額減価償却資産の特例が適用できます。
青色申告の申請条件
青色申告を行うためには、以下のような手続きが必要です。
- 「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出すること
新しく事業を開始する個人事業主は、開業から2カ月以内、もしくはその年の3月15日までに提出が必要です。 - 帳簿の作成が必要
複式簿記での記帳を行い、「総勘定元帳」や「仕訳帳」などを備え付けて、正確な収支管理を行う必要があります。 - 正確な帳簿に基づいて確定申告書を作成すること
これらの条件を満たしていれば、節税効果が非常に高くなるのが青色申告の特徴です。
白色申告との比較ポイント
一方、白色申告は比較的簡易な方法で申告できるスタイルです。以前は帳簿の提出義務がなかったため、個人事業主の多くが選んでいましたが、現在は白色申告でも記帳と帳簿の保存が義務化されています(所得が300万円以下の者を除く)。
以下は、青色申告と白色申告の主な違いをまとめた比較表です。
白色申告は、青色申告に比べて記帳の手間や提出書類が少なく、会計知識がない人でも取り組みやすい反面、節税効果は非常に限定的です。
特に、青色申告の最大65万円控除は、個人事業主にとって大きな魅力であり、年10万円以上の税金の違いになることも珍しくありません。
どちらを選ぶべきかの判断基準
「青色申告と白色申告、どちらを選ぶべきか?」という問いには、個人事業主の事業規模や収入、経費の管理体制によって答えが変わります。以下の基準をもとに判断するとよいでしょう。
青色申告を選ぶべきケース
- 売上や所得が一定以上あり、節税対策をしっかり行いたい
- 家族に給与を支払っていて、それを経費に計上したい
- 赤字が出た場合に翌年以降に活用したい
- 今後事業を拡大する予定がある
- 会計ソフトを活用して帳簿付けを行える
このような場合には、少し手間がかかっても青色申告を選ぶ価値があります。特にクラウド会計ソフト(freee、マネーフォワード、弥生など)を使えば、簿記の知識がなくても65万円控除の条件を満たす帳簿を簡単に作成できるようになっています。
白色申告を選ぶべきケース
- 事業を始めたばかりで売上がまだ少ない
- 確定申告にあまり手間をかけたくない
- 帳簿の管理に自信がない
- 節税よりも手軽さを重視したい
こういった場合は、まず白色申告から始めて、慣れてきたら青色申告に切り替えるという選択肢も現実的です。ただし、後から青色申告に変更する場合は、青色申告承認申請書を期日までに提出する必要があるので、忘れずに対応しましょう。
まとめ:青色申告は手間がかかる分、リターンも大きい
個人事業主にとって、青色申告と白色申告の選択は、税金だけでなく事業運営全体に大きく関わる判断です。将来的に事業を拡大したり、利益を残したいと考えているなら、最初から青色申告を視野に入れておくことをおすすめします。
特に、会計ソフトを導入すれば、青色申告のハードルは格段に下がります。節税効果を最大化しつつ、しっかりとした経営基盤を築くためにも、自分に合った申告スタイルを早めに見極めましょう。
参考:確定申告のやり方をわかりやすく解説!個人事業主や会社員が自分でやるには?
確定申告の準備に必要な書類一覧

個人事業主が確定申告を行うためには、事前に必要な書類を揃えておくことが非常に重要です。書類の不備や不足があると、正確な申告ができなかったり、税務署から修正を求められたりすることもあります。
ここでは、共通で必要な書類、青色申告特有の書類、控除を受けるために準備すべき書類について詳しく解説します。
共通で必要な書類
青色申告・白色申告を問わず、すべての個人事業主に共通して必要な書類は以下のとおりです。
1. 確定申告書B
個人事業主が提出するのは「確定申告書B」です。第一表と第二表の2枚が基本で、収入・所得・控除・納税額などを記載するメインの書類です。
2. 収支内訳書または青色申告決算書
- 白色申告の場合 → 収支内訳書
- 青色申告の場合 → 青色申告決算書(貸借対照表・損益計算書を含む)
個人事業主が1年間に得た事業収入と、それに対する必要経費をまとめた書類です。会計ソフトを使えば自動作成も可能です。
3. 本人確認書類のコピー
以下のいずれかが必要です。
- マイナンバーカードの両面コピー
- 通知カード+運転免許証などの本人確認書類のコピー
4. 銀行口座情報
還付を受ける場合は、**振込用の口座情報(通帳やキャッシュカードなど)**の提出が必要です。
5. 源泉徴収票(あれば)
会社や取引先から源泉徴収された報酬がある場合は、その明細書(源泉徴収票)を添付しましょう。還付申告の対象になることがあります。
青色申告に必要な書類
青色申告を選んだ個人事業主は、白色申告よりも提出書類がやや多くなります。ただし、それに見合う節税効果があります。
1. 青色申告決算書
- 損益計算書(売上・経費・利益など)
- 貸借対照表(資産・負債・純資産)
これらは会計ソフトを使えば簡単に作成できます。複式簿記による帳簿づけが前提となっており、65万円控除を受けるためにはこの決算書が必須です。
2. 帳簿類(保管義務あり)
- 総勘定元帳
- 仕訳帳
- 現金出納帳
- 売掛帳・買掛帳 など
※提出までは求められませんが、税務調査に備えて7年間の保管が義務付けられています。
3. 青色事業専従者給与に関する書類
家族に給与を支払っている場合は、事前に提出した「青色事業専従者給与に関する届出書」や、給与支払いの記録が必要です。
控除を受けるために必要な書類
個人事業主が確定申告で控除を申請する場合は、それぞれの控除に対応した証明書類を提出する必要があります。
主な控除と必要な書類
これらの証明書は、1月中旬〜2月上旬にかけて保険会社や自治体から送られてくることが多いので、郵便物を見逃さずに保管しておきましょう。
参考:【個人事業主向け】確定申告のやり方や注意点、必要書類を解説!
個人事業主の確定申告のやり方【初心者向け完全ガイド】

初めて確定申告を行う個人事業主にとって、「何から始めればいいのか?」という不安はつきものです。しかし、やるべきことはある程度パターン化されており、順序を守って準備すれば難しいものではありません。
このセクションでは、開業から申告までの流れをステップ形式でわかりやすく解説します。
開業届と青色申告承認申請書の提出
個人事業主として確定申告を行うには、まず「個人事業を始めたことを税務署に届け出る」必要があります。
1. 開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)
事業を開始したら原則として1か月以内に税務署へ提出します。これを提出しないと、税務上は正式な個人事業主として認められません。
- 提出先:住所地を管轄する税務署
- 提出方法:窓口・郵送・e-Tax
- 提出書類:開業届(国税庁サイトでダウンロード可)
2. 青色申告承認申請書
青色申告を希望する場合は、開業届とあわせて「所得税の青色申告承認申請書」も提出します。
- 新規開業者は開業から2か月以内
- 既に事業を行っている人はその年の3月15日まで
提出しないと、青色申告のメリット(最大65万円控除など)が受けられません。申請はe-Taxからも可能です。
取引の記録と帳簿付け
確定申告では、1年間の売上・仕入・経費・利益などを正確に記録することが求められます。これがいわゆる「帳簿付け」です。
帳簿付けの基本
- 収入(売上):請求書やレシート、銀行入金履歴など
- 支出(経費):領収書や請求書、クレジット明細など
- 帳簿の種類:現金出納帳、売掛帳、買掛帳、仕訳帳、総勘定元帳
青色申告を選んだ個人事業主は、複式簿記による帳簿付けが原則ですが、会計ソフトを使えば自動で対応可能です。白色申告でも、現在は帳簿保存義務があるため、日々の記録を怠らないことが重要です。
確定申告書の作成方法
帳簿付けが完了したら、いよいよ確定申告書を作成します。個人事業主の申告書は「確定申告書B(第一表・第二表)」を使用します。
作成方法は主に4種類あります。
会計ソフトを使う
クラウド会計ソフト(例:freee・マネーフォワード・弥生会計オンラインなど)を利用すれば、帳簿から確定申告書までを自動作成できます。
- 初心者でもわかりやすいUI設計
- 取引データの自動取り込み・自動仕訳に対応
- 青色申告65万円控除の条件を満たす帳簿作成にも対応
- e-Taxとも連携可能で電子申告が簡単
特に青色申告を目指す個人事業主には、会計ソフトの活用が効率的でミスも減らせるためおすすめです。
国税庁の作成コーナーを使う
「**確定申告書等作成コーナー(https://www.keisan.nta.go.jp/)**」を使えば、ブラウザ上で確定申告書を作成できます。
- 無料で利用可能
- 画面に従って入力すれば申告書が完成
- e-Taxまたは印刷して提出が選べる
ただし、会計ソフトのような自動仕訳機能はないため、帳簿は別で管理する必要があります。
手書きで作成する
少数派ですが、自分で印刷・記入して手書きで提出する方法もあります。税務署に行けば用紙がもらえます。
- 電子申告やソフトが苦手な人向け
- 記入ミスのリスクが高く、控除漏れの可能性も
青色申告で複式簿記を行う場合、手書きは負担が大きいため非推奨です。
税理士に依頼する
帳簿の作成や申告書の提出までを、プロである税理士に依頼する方法です。
- 時間と手間を大幅に削減できる
- 節税アドバイスや税務調査対応も依頼可能
- 顧問契約を結ぶ場合は月額制が一般的
- スポット依頼なら5万円〜10万円前後が相場
売上が大きくなったり、経費の計上が複雑になってきたら、税理士への依頼は強力な選択肢となります。
税務署への提出方法と提出期限
作成した申告書は、以下のいずれかの方法で税務署に提出します。
提出方法
方法
特徴
e-Tax(電子申告)
スマホやPCから24時間提出可能。65万円控除の条件にも対応。マイナンバーカードとICカードリーダー、またはマイナポータル連携が必要。
郵送
税務署宛に申告書を送付。提出日は消印有効。控え返送を希望する場合は返信用封筒を同封。
税務署窓口に持参
直接提出も可能。ただし確定申告シーズンは非常に混雑するため注意が必要。
提出期限(2025年分)
- 2025年2月17日(月)〜3月17日(月)まで
※通常は2月16日〜3月15日だが、土日祝の関係で前後します。
期限を過ぎると、延滞税や無申告加算税などのペナルティが発生するため、早めの準備が鉄則です。
まとめ:やるべきことを早めに整理し、確実な確定申告を目指そう
確定申告は、個人事業主にとって「事業の成績表を提出する」ようなものです。
しっかりと帳簿を整え、必要書類を揃え、提出期限を守ることが、信頼性ある事業運営や節税の第一歩となります。
初心者の方も、まずは開業届と青色申告の申請からスタートし、日々の記録をこまめに行う習慣をつけましょう。次のステップとしては、「経費として計上できる費用の具体例」を見ていきましょう。
参考:個人事業主の確定申告が初めての方へ!申告の流れとやり方
経費として計上できる費用の具体例

個人事業主にとって、経費の計上は節税の大きなカギとなります。適切に経費を申告することで、課税所得を減らし、所得税や住民税の負担を軽減することが可能です。
ただし、なんでもかんでも経費にできるわけではなく、「事業に必要かどうか」が明確な判断基準になります。ここでは、経費として認められる代表的な費用と、経費にできないNG例、また自宅兼事務所で事業を行っている人向けに重要な「家事按分」の考え方について解説します。
経費にできる主な項目
確定申告で個人事業主が経費として計上できる代表的な費目は以下のとおりです。
これらは、領収書や請求書を保管し、帳簿に正しく記載することが大前提です。クレジットカード明細も証拠資料として使えます。
経費にできないNG例
一方で、以下のような費用は原則として経費にできないため注意が必要です。
- プライベートな飲食や娯楽費
- 友人や家族との食事は、たとえ打ち合わせの話題が出ても経費とは認められません。
- 友人や家族との食事は、たとえ打ち合わせの話題が出ても経費とは認められません。
- 生活費・家族の生活用品費
- 日用品、洋服、家具など、事業に関係ない支出は経費にできません。
- 日用品、洋服、家具など、事業に関係ない支出は経費にできません。
- 個人的な旅行費
- 旅行をかねた出張などは、明確な業務目的がなければ全額NGになることも。
- 旅行をかねた出張などは、明確な業務目的がなければ全額NGになることも。
これらを無理に経費に含めると、税務調査で指摘され、追徴課税や加算税のリスクがあります。経費の判断に迷ったときは、「その支出は事業を行う上で必要か?」という視点で見極めましょう。
家事按分の考え方と注意点
自宅を仕事場として利用している個人事業主にとって、「家事按分(かじあんぶん)」は非常に重要な概念です。家事按分とは、事業と私生活が混在する支出を、合理的な割合で事業用と私用に分けることを意味します。
家事按分の例
- 電気代やインターネット代:1日8時間を仕事に使っているなら、約1/3を経費として計上
- 自宅の家賃:仕事用スペースが自宅全体の30%なら、その分のみ経費にできる
- 携帯電話代:通話記録やアプリ利用時間から業務利用比率を計算
注意点
- 根拠のある割合で按分することが重要
- 税務署に説明できるよう、記録やメモを残しておくと安心
- 不自然な割合(家賃の9割を経費にする等)はリスク大
家事按分の設定が曖昧だと、税務調査で否認される可能性があります。正確な帳簿管理と合理的な按分が、個人事業主の確定申告には欠かせません。
参考:確定申告しないとどうなる?ペナルティや申告が必要な方について解説
確定申告でよくある注意点と対策

個人事業主が確定申告を行う際には、提出書類のミスや提出期限の超過など、さまざまなトラブルが起こりがちです。特に初めて申告を行う場合は、つい見落としやすいポイントが多く存在します。
ここでは、個人事業主によくある確定申告時の注意点と、それに対する具体的な対策を紹介します。
申告忘れ・期限切れのリスク
確定申告の提出期限は、原則として翌年の2月16日〜3月15日(※2025年は3月17日まで)です。この期限を過ぎてしまうと、さまざまなペナルティが課せられる可能性があります。
主なペナルティ
- 延滞税:納付すべき税額に対し、日割りで利息が発生
- 無申告加算税:期限内に申告しなかったことに対する追加課税(最大20%)
- 青色申告特別控除の減額:65万円の控除が受けられず、10万円に減額される
対策ポイント
- 年明けには早めに帳簿の整理を始める
- 会計ソフトの「申告カレンダー」機能を活用する
- 忘れた場合は、**すぐに「期限後申告」**を行い、ペナルティを最小限に抑える
個人事業主にとって、期限を守ることは信用と信頼にもつながるため、申告の締切日を必ず意識しておきましょう。
所得の申告漏れや記入ミス
確定申告では、所得や経費の記載ミス・入力漏れが原因で、税額が過大・過少に計算されることがあります。これが税務署に指摘された場合、修正申告や更正の請求が必要になります。
よくある申告漏れの例
- 複数の口座・カードを使っていて、取引の一部を記帳漏れ
- 源泉徴収された報酬の記載忘れ
- 副業収入の申告漏れ
- 控除証明書の添付漏れ(医療費・保険料など)
対策ポイント
- 売上や経費の記録は1つの口座・クレジットカードに集約するとミスを防げる
- 会計ソフトを活用し、自動連携で入力ミスを防止
- 確定申告書を提出する前に税理士や詳しい知人にチェックしてもらう
小さなミスでも、累積すると税務調査のきっかけになる可能性もあります。記入内容の確認は入念に行いましょう。
住民税や国民健康保険への影響
個人事業主の確定申告は、所得税だけでなく、住民税や国民健康保険料にも直結します。つまり、確定申告の内容によって、翌年度に支払う税金や保険料が大きく変動するのです。
具体的な影響
- 確定申告で申告した所得額をもとに、住民税の額が決定
- 同様に、国民健康保険料も所得に応じて算出
- 赤字申告や控除活用で所得を抑えると、翌年の税負担が軽減される
一方で、うっかり申告漏れで所得が高く出てしまった場合、本来より多くの住民税・国保料を支払う羽目になることもあります。
対策ポイント
- 正確な所得計算を行うことが第一
- 控除を活用して、所得を必要以上に高くしない
- 申告内容に応じて、住民税や保険料がどう変わるかをシミュレーションしておく
会計ソフトには「納税額シミュレーション機能」があるものもあり、確定申告後の家計への影響も把握しやすくなっています。
確定申告で節税につなげるためのコツ

確定申告は、ただ税金を計算して納めるための手続きではありません。控除制度や仕組みを理解し、上手に活用することで、個人事業主でもしっかりと節税につなげることが可能です。
ここでは、特に効果的な3つの節税のポイントを紹介します。
控除制度の活用
確定申告で節税を図るうえで欠かせないのが、所得控除の存在です。控除制度とは、課税対象となる所得から一定額を差し引くことができる仕組みで、これにより最終的な税負担を軽減することができます。
主な控除制度には以下のようなものがあります。
- 医療費控除:1年間に支払った医療費が一定額を超えると適用
- 社会保険料控除:国民年金・国民健康保険の支払いが対象
- 生命保険料控除・地震保険料控除
- 寄附金控除:ふるさと納税なども含まれる
- 小規模企業共済等掛金控除:退職金代わりの積立に使える制度
これらを適切に申請するだけでも、数万円〜数十万円の節税につながることがあります。必要書類(証明書や領収書)の保管も忘れずに行いましょう。
青色申告特別控除の活用方法
個人事業主が青色申告を選ぶ最大のメリットが、青色申告特別控除の活用です。条件を満たすことで、最大65万円の所得控除を受けることができます。
適用の条件は以下の通りです。
- 複式簿記による帳簿作成
- e-Taxまたは電子帳簿保存対応で申告する
- 期限内に青色申告承認申請書を提出している
会計ソフトを利用すれば、複式簿記も簡単に対応可能。確定申告書作成もスムーズに進むため、初心者でも十分に活用できます。節税を重視するなら、青色申告は強力な選択肢です。
家族への給与支払いによる節税
家族に事業を手伝ってもらっている個人事業主は、家族への給与支払いを経費に計上することで節税が可能です。特に青色申告者が活用できる「青色事業専従者給与」制度は効果的です。
この制度を活用すれば、実際に業務をしている配偶者や子どもに支払った給与を、全額必要経費として計上可能になります。ただし、次の点に注意が必要です。
- 事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出
- 実態に即した業務内容と給与額であること
- 毎月の給与支払いを記録・管理していること
節税と家族への還元が両立できる制度なので、事業を家族で運営している個人事業主には特におすすめです。
電子申告(e-Tax)を活用してスムーズに確定申告

確定申告の提出方法として近年利用が増えているのが、**国税庁が提供する電子申告システム「e-Tax」**です。個人事業主にとっても、手間を省き、正確に申告できる便利な手段として定着しつつあります。
ここでは、e-Taxのメリットや利用方法、注意点について解説します。
e-Taxを使うメリット
e-Taxを利用することで、以下のようなメリットがあります。
- 24時間いつでも提出可能(深夜でも申告できる)
- 税務署に行かずに申告が完了
- 添付書類の提出が一部省略可能
- 青色申告特別控除65万円の適用条件を満たせる
- 還付金の振込が早くなる傾向
郵送や持参に比べてスピーディーでスマートな申告が可能なため、特に時間や手間を省きたい個人事業主には最適な選択肢です。
スマホでもできる?便利な方法
以前はPCでしか使えなかったe-Taxですが、現在はスマートフォンにも対応しています。
- マイナポータル連携を使えば、マイナンバーカードの読み取りもスマホで完結
- 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」もスマホブラウザに対応
- 会計ソフトのスマホアプリでもe-Tax連携可能なものが増加
PCが手元にない個人事業主でも、スマホ1台で確定申告が完了する時代になっています。
電子申告の注意点と準備
e-Taxを利用するには、いくつかの準備が必要です。
必要なもの
- マイナンバーカード
- ICカードリーダー(もしくはスマホのNFC機能)
- 利用者識別番号(e-TaxのID)
また、初めての利用時には事前登録が必要で、ある程度の操作に慣れるまでは戸惑うこともあります。会計ソフトのe-Tax連携機能を使えば、これらの操作も簡略化できます。
注意点
- 電子申告の不具合は提出期限内に自己解決が難しい場合がある
- ID・パスワード方式は2025年以降廃止予定で、マイナンバーカード方式が主流に
正確でスムーズな申告を目指すなら、事前準備を早めに整えておくことが重要です。
確定申告に関するよくある質問

Q1. 副業だけでも確定申告は必要?
副業がある場合でも、所得の種類と金額に応じて確定申告が必要になることがあります。たとえば、会社員として給与を受け取りながら副業で得た所得(事業所得や雑所得など)が年間20万円を超える場合、確定申告の義務が生じます。
また、20万円以下であっても住民税の申告が必要になる場合があるため注意が必要です。
副業がアルバイトなど給与所得であっても、年末調整がされていない場合は申告対象となるケースがあります。副業を始めたら、収支の記録をこまめに残しておくことが大切です。
Q2. 申告後に間違いに気付いた場合は?
確定申告を提出したあとに記入ミスや漏れが見つかった場合、内容によって対応が異なります。
- 税額が少なく申告されていた場合:すぐに「修正申告」を行い、不足分を納税します。
- 税額が多く申告されていた場合:原則として5年以内であれば「更正の請求」により、過払い分の還付を受けられます。
いずれの場合も、訂正に気づいた時点で早めに対応することで、加算税や延滞税のリスクを最小限に抑えることができます。
Q3. 開業初年度の注意点は?
個人事業主として開業した初年度には、いくつか注意点があります。
まず、「開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)」と、「青色申告承認申請書」を期限内に提出しなければ、青色申告の特典が受けられなくなります。開業から2か月以内、もしくは3月15日までの提出が基本です。
また、収支の記録や帳簿付けの習慣を最初から整えておくことが非常に重要です。後になってからまとめて帳簿を作成しようとすると、抜け漏れや記憶違いが発生しやすくなります。
初年度こそ、会計ソフトを導入して効率的に管理することをおすすめします。
参考:【個人事業主の確定申告】青色申告と白色申告どちらを選ぶ?
確定申告は正しく理解して早めの準備を

確定申告は、個人事業主としての事業運営に欠かせない大切な業務のひとつです。「難しそう」「面倒そう」と感じるかもしれませんが、基本の流れと必要な準備を理解すれば、誰でもスムーズに進められます。
特に、青色申告による節税効果や、控除制度の活用は、事業の利益を守るためにも非常に重要です。また、期限内の提出やミスのない帳簿付けは、信頼される個人事業主としての第一歩とも言えます。
早めに書類を準備し、確定申告に向けた体制を整えることで、ストレスのない申告シーズンを迎えることができるでしょう。日々の記録を大切にしながら、着実に申告の準備を進めていきましょう。